※コースタイム:見通りキャンプ場(6:00)~御池(7:45)~(45分休憩)~燧ヶ岳山頂東峰(11:20)~燧ヶ岳山頂西峰(12:00)~(30分休憩)~下田代十字路(14:10)~山ノ鼻(15:40)
連続登山3つ目は燧ヶ岳。この山と共に至仏山も登ってしまおうと1泊2日で山へと入るために今朝早く、夜明けと共に登山口へと向けて自転車を漕ぎ始めていた。その標高差は700m近く、それを駆け上った後に登山が待っているために自然と気合が入る。いや、入れなければとてもやり切れない、自分に負けてしまうがために、「やるんだ!」と、まずはその一歩である登山口までの坂に朝4時起きという時間から支度し立ち向かっていた。
すっかり木々の葉は落ち、赤いじゅうたんを敷き詰めたような大地に流れる沢に何度も見惚れ休憩を兼ねながら足を止め、そしてまた自分に負けるなと自転車を漕ぎ出していく。目前には燧ヶ岳の姿がどんだけ漕ぎあがろうとも変わらず高々と浮かび上がり、ただそれを目指して上がっていく。空も悪天の予報に反し、そんな自分を応援してくれているかの様に所々晴れ間も覗いていた今朝の空模様であったが、しかし、そんなそれにも関わらずどこからともなくポツリポツリと雨が・・・ この空では全く予想もしていなかっただけに、ショックは大きく、すぐに止むだろうと最初のうちは高をくくっていたのだが、勢い止まぬその雨に閉口し、仕方なくカッパを羽織るのだが、そのため坂と言う苦痛と共に暑さにも苦しめられ、今まで聞いていた爽やかな朝の沢の水音は、今はどこへやら、余裕がなくなり追い詰められ必死で自分と戦いながら坂を漕ぎあがっていった。
唯一の救いは荷物がいつもよりは軽いこと。着替え、そしてPCなどの今回の山行に不必要なものを出来るだけキャンプ場に預けての今回の上り。そのお蔭で蒸し暑さという予想外な苦労もしたが、約2時間の格闘の末、ようやく峠であり、また登山口ともなる御池へと登りつめた。そして持って来たほとんどの荷物を巨大な75Lザックに詰め込んで、また自転車から登山へと気合の転換を、とくに足へと言い聞かせながら燧ヶ岳山頂目指して小雨降る中、踏み出していった。
さすがにこの悪天のせいか、それともこの時期のせいだろうか、平日のせいだろうか、登山者の気配はない。全盛期のその賑わい様を物語るような見渡す限りの広い駐車場も、今は車止まらぬ不気味なほどの静けさの中を、いつ降ったであろう、路肩に僅かに残る雪を眺めて、登山道へと踏み入れていった。最初からもう最近嫌と言うほど見てきた泥道に迎えられ、そしてそれに続いたのが岩と泥の急登であった。テントと必要以上の防寒着を積んだザックが肩に食い込む中、岩場に足盗られまいと慎重に足を踏み出していくが、しかし、思わずその重さに身体を盗られることが多々。時には手で身体を引き寄せて攀じ登るほどの急登だけにちょっとした油断が命取りともならない登りだけに冷や汗ものである。そうならない為にも、また心を引き締め、一歩一歩小雨の中を攀じ登って行った。
標高と共に、また風と共に体感温度はみるみると下がり、急登を必死で歩いているにも関わらず服を着込み、そして山頂へと登り詰めた。東峰であり、最高峰ではないのだが、ほぼ変わらぬ標高を持つ隣り合う頂である。立っているにもやっとの強風に、またあまりの寒さに記念写真後すぐに隣の最高峰へと歩み始めるが、下り始めてすぐにこの登山初の登山者と出会った。それも単独登山者で、こんな天気に一人で登るなんて物好きも居る者だと、その登山者に対し、また自分に対しても思い苦笑いを浮かべながら登山者を見送ろうとすると、その容姿が誰かに似ていることに気付いた。それは全国各地でもう何度もお会いしている”のず”さんで、こうして一人黙々と悪天の中を登ってくるところなんかは、まさにのずさんを見ているかのようであった。ほんと、似ている人もたくさんいるもので、人とはこれだから面白く好きだと思いながら、あいさつを交わすと、どうみてもその登山者はのずさんにしか見えない。そして彼も私同様に当惑しているようであり、また幻を見ているかのような目でお互いを見入っていた。そんてそんな沈黙を破ったのだが、のずさんの笑みと共に発した「しんちゃん?」という声であり、私も幻を見る目から、それと同時に笑みへと変わった。そんな偶然の出会い。もちろん、のずさんはHPよりこの辺りに私が居る事は知ってはいたが、この日に燧ヶ岳に登ろうとは携帯圏外の為に連絡取れないだけに知るよしもなく、また時間ももちろん分からない。さらにはもうひとつ偶然があり、実は私は隣の最高峰の頂へ行く道を間違え、本当の下山コースへと入ってしまっていた。それが為にこうしてすれ違ったのだが、素直に道を間違えずに行っていれば、ニアミスしていただろう。そんな偶然が重なった不思議な再会だけに、また聞けば今日、共に初めて出会った登山者がこのような出会いであり、その安堵感、嬉しさからも、この再会の喜びは共に大きく、この寒さと強風の中でも会話に花咲かせながら最高峰を共に目指していった。
寒さに震えながらの2人での山頂。でも、気持ち的には温かく、会話、食事、そして記念撮影と没頭しているとあっという間に時間は流れて行き、ひとりではすぐに逃げ出したくなるほどの寒さであったが、こうした楽しい時間を共に山頂で過ごし、別れを惜しみながらも、最後はその寒さから逃げるように恒例の固く痛い握手を交わし、別方向へと山頂を後にし、またお互い孤独な道へと戻っていった。
こうして下山へと向ったのだが、しかし目指すのは次の山、連続登山4つ目の至仏山の登山口である。地味な谷間の樹木で覆われた展望も何もない道を黙々と降りていく道は次第に平坦へと変わり、そして木道へと変わっていく。辺りも景色も一変して行き、見事な巨木連なるブナ林となるが、しかし瑞々しい青々とした木々、もしくは燃えるような紅葉はなく、今は骨を剥き出したような白い幹だけを見せていた。そしてその寂しさをさらに強調したのが、そのすぐ先に現れたゴーストタウン。そう表現するのが妥当なほどの、ただ冷たい風だけが音を立てて吹き抜けていく、すっかり閉館してしまった山小屋の姿であった。それも1棟だけでなく、何棟も立ち並んでいるだけにより不気味に感じた。それを抜けると尾瀬ヶ原であり、その遥か先には至仏山が聳えるのだが、今は僅かに裾根だけを残して雲に没してしまっていた。明日こそ晴れること願いながら、誰もいない尾瀬ヶ原の果てしなく続く木道を約2時間、ただ一人歩き続ける。まるで砂漠の中に取り残されたような静けさ、寂しさ、景色に浸るというよりも、楽しむというより、自分との戦いであった。そんな中でホッとさせてくれるのはやはり人の声であった。ひとつは途中の龍宮小屋。木道整備の為の作業員が宿泊しているようで、このシーズンオフ時にも賑わいを見せており、そしてまた、最後、到着した至仏山の登山口となる山ノ鼻でもビジターセンターのみがまだひっそりと開館しており、そんな人の声に心和まされた。
誰もいないシーズンオフのキャンプ場でひとりポツンとテントを張り、そして山でのひとつの楽しみのひとつ食事だ。寒いだけに温かいのを嫌と言うほど飲むぞ、そんな意気込みでザックを開放するのだが、肝心のガスバーナーがない・・・ そして探すもう以前に、入れた記憶がないのであるから、探すこともなく呆然と立ちすくんでしまった。主食は炊かなければいけない米しかないだけに、どう明日まで過ごそうか、ガスさえあれば2泊でも出来る量の食材を持っているのだが、この時ばかりはどうしようもなく、ただ食べれるものを漁って見ると、今回に限りいつもよりも豊富に持ってきていた。いつもなら行動食ほとんど無しで頑張っているのだが、今回はすぐ下で食糧調達できたこともあり、パン・菓子などあり、また非常用にとアルファ米(水またはお湯を入れるだけでご飯が出来る)を一袋持ち歩いていたのも助かって、なんとか明日も過ごせそうである。しかし、とは言っても、今夜の夕食は昼食もまともにとっていないにも関わらず菓子一袋のみで、なんとかやり過ごす。空腹を堪えながら読書をしばらく楽しむも、集中力湧かずに20時には就寝した。また激しく降り始めた雨音を聞きながら・・・
★今日のお食事♪
・朝食 : ごはん・コンソメスープ(餃子・小松菜入り)
・昼食 :
パン×3
・夕食 :
菓子