※コースタイム:焼走り登山口(7:30)~ツルハシ分れ(9:40)~山頂(11:05)~御鉢周遊~平笠不動避難小屋(11:45)~休憩~小屋発(12:15)~焼走り登山口(13:40)
ビュービュー、と音を立て木々が大きく揺れ大地がざわめく。夜半過ぎから徐々に風が出始め朝には絶え間なく強風が辺りを襲っていた。もちろんテントも同様で大きくしなる。まさかこれほどの風が吹くとは思いもせず、さらには失敗したのが風上に向けて入り口を設けてしまったことで、開ければ突風がテント内を襲いテントは悲鳴を上げる始末。何度も設営し直そうとも思ったのだが、しかし面倒でもあり、また雨が降り出せば風向きも変わるだろうと安易に考えていた。そんな強風の朝、空を見上げれば雲こそやや多いが目の前には南部富士、こと岩手山はくっきりと大空に浮かび上がり、それは見慣れた富士山と変わらぬシルエットを見せていた。
そんな岩手山望む朝は5時に起床し自炊、そしてHPと更新しながら朝の出発準備に勤しむ。とくに日記はなかなか終えることが出来ず、終わらせてから出発しようと当初思っていたのだが、この後下り坂の天気予報を気にし、早めに切り上げての出発にすることにした。冷たい強風吹き荒れる今朝、「これでもか!」と言うほど着込んでの出発であった。
「寒い~」と悲鳴を上げて歩き始めたのだが、しかし、登山道へと踏み入れればすぐに谷間の道へと変わり同時に風はぴたりとやむ。木々は上で相変わらずざわめいてはいるが、しかしここまでは強風襲うこともなく、また、日の方か眩しいほどに照りつけ、そのあまりの陽気に歩き初めて間もなくTシャツになるまで脱ぎ捨てることになった。風だけでこれほど変わるものかと信じられないほどである反面、山頂付近の風を心配しながら歩き初めでもあった。
谷間のすぐ左の丘の上には、今歩く青々とした大地から一変し、草木ひとつ生える事のない真っ黒な岩がゴツゴツした無機質な世界がいつまでも広がっていた。それは”焼走り溶岩流”だ。そこへ一歩足を踏み出せば、大地の大きさ、そして恐ろしさを感じる溶岩流跡の姿であり、また近年、活動を再開し始めた岩手山という活火山の恐ろしさをより一層高めていた。そこへと今登ろうとしている自分が心配にもなり、逆にまた興奮しはじめるという不思議な心境の中、先へと足を進めていった。
登山道。最初こそ穏やかな傾斜の快適な道が続いたが、歩き進むにつれて目に見えて坂は斜度を増していった。さすがは富士山型の山であると思いながら歩速衰えることなく軽快に最初こそ登って行ったのだが、しかし、傾斜はさらに増し、それに加えて足場はザレ場と変わり、そうなるとさすがに思うように足は進まなくなり始める。しかし、襲う急登は容赦なくさらに傾斜は増す一方で最後は完全にバテながら、山頂はまだか・・・ とつぶやきながらも、すぐ頭上に登山口から見上げた姿と変わらぬ円錐形でそびえている。そんな山を見ては、またつぶやき、そして途方に暮れそうにもなるが、しかし、変わらぬ景色だが、この一歩が山頂に近づいている。そう強く自分に言い聞かせて重くなりゆく足を踏みだしていった。
道は溶岩流を越えた辺りから山を巻く様に続いていた。さすがに山頂が近づくにつれ直登はきつくなってきたのだろが、しかし、巻いたと言っても道は緩やかになるかと言ったらそうではない。いや、逆にさらに傾斜は増す一方で、その激坂に挑んでいくのだが、しかしすでに足は重く、気まで重くなりつつある。が、そんな心を洗ってくれるのはやはり展望であった。北側を見渡せば秋色になりつつある田園広がる岩手の台地が延々と広がり、そしてその頭上は青空が染めている。それに反し、南側はと言えば雲である。それも押し迫り蠢く大迫力の雲であり、南より北へと徐々に押し迫り、そして自分も飲み込もうとする勢いである。そんな曇に追い立てられながら東より北回りで山を巻きながら山頂を目指していった。じきに昨日登った八幡平は目の前にくっきりとそびえるのが覗え、そして、その中でも特に印象的なのが昨日同様にやはりモッコであった。誰が見てもすぐに分かるその八幡平のなだらかな大地広がる山頂に突き出た頂。今日もそれに魅せられながら足を進めて行った。
ツルハシの分岐辺りまで来てようやく、平坦な道が迎えてくれホッと一息つくことが出来る。また、ここ北側斜面までまわってくると先ほどのザレ場からまた樹林帯へと戻り、色付きはじめる木々を眺めながらこの先、階段のようにグッと登っては、平坦、そしてグッと登るような道を繰り返していくと道は山の西側へとまわりそして避難小屋へと辿り着く。ここまで来ればもう肩まできたようなものである。もう一分張りだ!そう自分に言い聞かせて、八幡平を背にしながらハイマツ帯を掻き分け登っていくが、足場はまた取られ易いザレ場へと変わっていった。そしてそれに加え襲うのは冷たい肌を刺すような強風である。今まで山の影、北側に隠れていただけに全くの無風であり、もうあの朝の風をすっかり忘れるほどの快適さであったが、しかしやはり風は吹き荒れていた。西側からさらには樹林帯を抜け山頂直下まで来るとひどい風に襲われ、堪らず防寒着を取り出し着込む。しかもそれだけではすまない。さらには山頂に近づくにつれ霧が時折襲い、終いには視界僅か数メートルという中に没してしまう。火口見下ろす御鉢へとやっとの思いで登りつめはしたが、しかしこの有り様ではもちろん視界はなく、襲う冷たい強風も肌を突き刺し、先ほどの青空から思いもしないこの山頂の天気であった。しかし、それほど幻滅することはなかった。こんな時間もいいではないかと思え、今、振り返ると自分でも不思議なほど、こんな天気でも楽しんでいた。そのとき、突風と共に時折吹き飛ぶガスの間から見せる果てしなく続く雲海。しかも日に照らされ延々と光り輝いていた。わずか2度ほど望めただけであるが、しかしこの時の言葉にならないほどの感動、それが有ったらばこそこう思える登山になったのかもしれない。そんな霧の中の山頂であった。
「ビュー」と物凄い音を立てて風は通り過ぎてゆく。まさに突風であり、それも氷のように冷たい。そんな山頂であるから、とても楽しんでいるような状態ではなく、記念写真後、間を置くことなくすぐにまた御鉢周りを歩き始めてそのまま周遊し下山へと向う。そして100mも下れば霧は嘘のように晴れ、また北斜面へと徐々に歩き始めれば風も信じられないほど和らいでいった。見上げる山頂だけは相変わらず南から押し寄せる雲に飲まれ、また風で蠢いていた。生きているようにも見える山頂を何度を振り返りながら下っていき、そして先ほどの肩と表現した避難小屋まで下ったところでようやく大休止とした。
この小屋のすぐ頭上に巨石積み重なる小さな頂がある。そこに登って北の青空広がる空、そして果てしなく続く台地を見下ろしながら昼食をとる。山頂のあの天気が今さっきのこととはとても思えない静けさそこには漂よっていた。北から見上げる山は四方より雲が襲いかかり飲み込もうとしている。が、その山の巨大さからか相変わらず飲み込むことができず、この北の大地には青空が広がり、この後も気持ちよく来た道を下山して行った。
足取りはまるで走っているかのように早い。自分では走っているつもりはないが、傍から見たら走っているように見えるだろう。そう自分でも思うほどトントンと音を立てながら軽快に足を運んで行き、休むことなく一気に登山口まで駆け下りた。まさにこの駆け下りたと言う表現が適切だろう。あれほど苦労した登りが、下りではあっという間に過ぎ去り、こうして登山口に降り立った今も自分でも信じられないほどであった。そんな為か、その達成感は大きく、大きく深呼吸し喜びを噛み締めながら誰もいないキャンプ場へと一人戻り、張りっぱなしのそのテントに寝転んだ。久しぶりの登山であった。それが今回の感想だ。自分の中では登山は大雪山以来だろう。その間にもたくさん山を登頂してきたが、しかし、どれも標高差がなかったり、またみんなで楽しんだ山だったりと今日の様に黙々と一人登るようなことはなく、それがために登山が久しぶりに感じ、登頂の喜びを下山してきた今、噛み締めていた。
14時。まだまだ行動起こせる時間ではあるが、今日はこのままのんびりテントで過ごす。一人でやや寂しいキャンプ場であるが、たまにはこんなところもいいだろうと、思う存分に羽を伸ばし、読書、そして大の字に昼寝と、自分の時間を存分に満喫した。しかし、それも17時まで、そこからはまた慌ただしく時間は流れだす。それはHPの更新作業。今朝、書けなかった分、日記は溜まり、それらを書き終えるためにも夜は黙々とPCに向っていた。だが、その集中力はいつまでも続くわけではない。途中、息抜きも兼ね、また、登山の汗を流すべく近くの温泉へと入浴♪そして気分を一新し、またPCへと立ち向かうが、しかし徐々に睡魔に襲われ、日記も進まなくなり、23時ごろ今日も途中で断念し就寝の途についた。 風は相変わらず吹き荒れテントを揺らしているが、心配していた雨は一向に落ちてこなかった。
★今日のお食事♪
・朝食 : ごはん・シュウマイ・味噌汁
・昼食 : パン×4
・夕食 :
インスタントラーメン・もち