車輪人の自転車日本一周・登山の旅 車輪人の自転車日本一周・登山の旅

2003年 9月23日 (火) - 443日目

天気 :

体調 : 良好

宿泊地 : 焼走りキャンプ場

本日の移動 : 鹿角市(大沼)~見返峠(八幡平登頂)~松尾村~西根町(焼走り)

走行距離 : 49.5km

累計距離 : 20,097km
本日の出費

食費 : 816円

観光費 : 0円

宿泊費 : 300円

雑費 : 0円

費用詳細 : 宿泊費:キャンプ場料金

現在地 : 岩手県西根町  ( 全走行図 )

共感

 「寒い・・・」、気温は僅か5℃、約1000mのこのキャンプ場で震えながら目を覚ますが、あまりのその寒さに寝袋から起き出ることが出来ず、2度寝、3度寝・・・ 結局、日の昇り始めた5時過ぎ、苦痛な顔を浮かべながらも仕方なく重い腰を上げ寝袋から這い出てPCの電源を入れる。そう、今日もやっぱり日記の書きから始まるのだが、しかしそのあまりの寒さになかなか思うように進まない。そんな時に昨日共に自転車を漕ぎここまでやってきた上中さんが起床し、「おはよう、寒いね・・・」とお互い情けない声を上げながら朝の第一声を交わすが、しかし、こうして辛い寒さを共感できることが嬉しくもあった。いつもなら、どんなに辛くても、ただひとりジッと耐え乗り越えるしかなく、また、その辛さを伝えることも出来なければ、さらには共感し合える事もできない。しかし、今日は2人、共にこの寒さを共感し、そして励ましあう言葉こそなくとも、しかし、「寒いね・・・」と震えあうことが、”寒いのは自分だけではい”そういう気持ちが起こり、さらには飛躍し”もっと寒さで苦しんでいるひとはたくさんいる”と素直に思える。いや、実際普段からそう思ってはいるが、しかし、こうしてお互いに目の前に見て苦しみあうことはなく、やはり、こうした今、ここで共感し合えるのが今朝の冷え込みながらも、笑って寒さを凌げる元気を貰っていた。

今日も坂にアタック・・・
 そんな寒い朝、朝食は2人で作りあったラーメンご飯。1人ならどんなに温かい料理を食べても舌を火傷するくらいなもので、心から温まることはないが、こうして2人で作りあい食べる食事は温かい。それでいてさらに旨いから言うことなしだ。そんな朝の温かさに次第に日記のペースも上がり、8時過ぎには書き終え、そして9時、上中さんと共に今日も八幡平の坂へと挑むべく、まだ朝の寒気和らぐ前から元気に漕ぎ始めた。

 うっすらと紅葉色、色付き始める木々を眺めながら坂に挑み始めたのだが、すぐに足を止めることになった。そこは昨日入った温泉・後生掛温泉なのだが、その湯ではなく”泥火山散策路”という看板に誘われてのことである。もちろんこの寒い朝だけに湯に上中さん共に「入りたーい・・・」と言葉を溢すが、しかし、そんな2度も入浴するような贅沢はお互いできず、その贅沢はお腹に入る食べ物へと変わっていた。そこで直売していた”りんご”、すでに青森の地は外れてしまったが、しかしその圏内であることは確かで、また青森で食べてこなかったこともあり、迷わず2人して購入し、リンゴ片手に泥火山散策路へと入っていった。

 リンゴの味まで硫黄臭い・・・ それほどになるほど、そこら中から噴煙を上げ辺りに硫黄臭を漂わせていた。咳込むほどのところもあり、さすがに不快な顔を浮かべての散策スタートであるが、しかしそれが異世界だけにもちろん楽しくもある。目の前にはこの世の物とは思えない死の世界が広がり、まさに絵に描いたような地獄であり、そんな中を歩くのだから自然と胸高鳴る。さらには泥噴き上げる泥火山、そして広大な温泉湖、もうこの寒さだけにこの湖へと飛び込みたくなるのだが、しかし噴出温90℃以上の熱湯・・・ ただ、その蒸気を浴びながら温泉に入ったような気になりながら散策路を後にした。

りんご片手に後生掛温泉
後生掛温泉・泥火山
後生掛温泉

 また八幡平へ向けての上りへと戻る。 昨日に引き続いての上りで今日は約600mを一気に駆け上がるのだが、果たしてどのような坂が待ち構えているのか、緩やかな坂が続けば嬉しいのだがと2人して期待して上り始めるのだが、しかし目の前に立ちはだかるのは壁のような坂ばかり、コーナーを曲がるたびに変わらぬその坂に、悲鳴を上げ続けるが、しかしその悲鳴も連呼し合うから面白い。2人だからこそで、この苦しさもこうして共感し合えるのがまた嬉しくもあり、時には嘆き、情けない言葉を交わしあいながら、また時にはこの激坂に似合わず陽気な会話で盛り上がり、苦痛すらも忘れたりと、己の体力と精神力が勝負の坂ではあるが、しかし、こうして精神的に助け合い、協力して挑んでいることを実感しての坂であった。

 漕いでも漕いでも続く坂も、やはり終りが待っている。峠が見てたときはお互い歓喜の声を上げ、その峠に向け一気に漕ぎあがりたい気持ちが込み上げるが、しかし気持ちだけで、体力まではついていかずに、筋肉はただ悲鳴を上げていた。さらにはこうして必死で漕いでいるにも関わらず寒い!気温は何℃だろうか、冷たい風が汗で濡れた身体を遅い、熱を容赦なく奪っていく。手足はもう今から悴み、上りでこれでは下り、どうなってしまうのだろうと心配しながらも、今は必死に目の前の峠目指して最後の力を振り絞っていた。

 八幡平。名前のとおり山頂付近は”平”な所で、どこが山頂かとても見た目では分からないだだっ広い大地である。そんなところだから、上りきった最後は、見事な展望を見下ろしながらも小さなアップダウンを越えて行くことになる。どこが峠とも言いがたいところで、拍子抜けしなくもないが、しかし、それが上り終えた余興のようでもあり悪くはない。途中、何度か立ち止まり広がる展望を楽しみながら、人で賑わう見返峠へと上り詰めた。

 「やったー!」という声上げたいところだが、実際は「寒い~」という悲鳴のような声を上げてしまったほど寒い。峠の賑わうレストハウスに到着後、逃げるようにすぐにその室内へと駆け込み、そして、その温かさに驚く上りきった喜びよりも、その温かさが嬉しいほど身体は冷え切り、すぐに炊かれていたストーブに2人して張り付き硬直した手足を温めた。また、ここで暖をとりながら持ってきたパンを食べお腹も満たし、さらには防寒具を精一杯に着込んで、いよいよこの八幡平の山頂目指して寒風止まぬ世界へと踏み出した。

 100名山・八幡平の山頂へと、この峠からは僅か20分ほど、それもほとんど登る事もなくほぼ平坦な遊歩道で、とても登山と言う雰囲気ではない。もちろん自分の風袋も服装こそ防寒着を着重ねてはいるが、しかし足元はサンダルのままである。それで十分なほど道は整備され、まるで隣家へと遊びに行くような気分である。景色も峠付近とは一変、平坦な林の中へと入ってしまったものだから、目の前は木以外に何も見えない。唯一、八幡沼の展望台だけが広く大地を見渡すことが出来た場所であるが、しかし、その先はというと見下ろすことは出来ない為、高所感はなく、なんとなくここも拍子抜けする展望であった。そしてさらに拍子抜けさせたのが山頂だ。上中さんと尽きることない会話に盛り上がっている中、平坦な遊歩道を歩いていると通り過ぎてしまうようなところで、事実、「あっ!」と、通り過ぎそうになってしまった。辺りは木々で覆われ展望はなにもない。あまりのそのなさに申し訳ないように一段高くした展望台が建つのだが、しかし、そこへ登ったとしても、変わらぬ木々の大地が広がるのみでとても山頂とは思えない展望が広がるばかりであった。しかし、そんな山頂も八幡平らしくて面白い。さすがは八幡平と2人笑みを溢しながら登頂を喜び合い記念写真を撮りあった。

さあ、八幡平だぁ!
平坦な道を山頂目指して
八幡沼
山頂展望台
八幡平山頂だ~!
山頂にて♪
八幡平のシンボル?モッコ
 やはり見返峠辺りの展望が一番よい。また登山口であるこの峠に戻り暖を取り直す。目の前にはモッコと呼ばれる、この平坦な山頂を覆う台地には珍しく突き出た山頂が聳える。どう見てもこちらが山頂として相応しく見えるが、しかし標高的には40mほどの差で八幡平の大地の方が高い。そんなモッコの右手奥には薄っすらと鳥海山の稜線が浮かび上がっているのが見えた。ただ、その山容までは望むことは出来ず鳥海山という迫力はなかった。迫力と言えば岩手山だ。すぐ目の前に聳える高峰だけに迫力満点なのだが、しかし山頂付近が雲に隠れてしまっているのが残念でならない。雲が晴れることを期待しながら、岩手名物の”ゆべし”を口に運んでいた。ちなみに”ゆべし”とはクルミの和菓子で、上中さんの大好物だそうだが、しかし私の口にはあまり合わず、ちょっと眉をひそめての岩手名物であり、峠のひと時であった。

 これでもか!というほど着込みに着込み、くだりのスタートだ!さすがに着込んだだけあって思っていたよりは寒さはないが、それでも直接風を受ける顔だけは硬直していた。だが、その硬直も歓喜の声が洗ってくれる。目の前に聳える岩手山がいよいよ目の前に迫り、その雄大さを見せ、さらにはその裾野へと目を移せば見事な田園広がる台地が広がる。いつも間にか強い日差しが辺りを多い、見下ろす全てが光り輝き目を楽しませてくれた。もうどこに目を移せばいいのか困ってしまうほどで、一気に下り降りよと思っていた坂ではあったが、あまりの美しさに何度も自転車を止めてはその展望を楽しんだ。

岩手名物・ゆべし
岩手山を望む(上中氏)
眼下を見下ろす

 そんな下りの道中、ちょっと気になる建物が視界に入る。山腹の何も木々に覆われた何もないところに忽然と並ぶ鉄筋コンクリートの建物。何棟も並ぶのだがしかしそのどれもが廃墟である。思い出しただけでもゾッとするようなその廃墟へと歴史好きな私は誘われるように入っていった。やや気の進まぬ様子の上中さんであったが、しかし、こうして2人だからこそ私もここまで入って行けたのだろう。いくら昼間とはいえ、これが一人ならとても怖くて中へとまで入っていく勇気はでなかっただろう。ちなみにその廃墟とは松尾鉱山跡であった。総数10棟も並ぶ4階だけの建物は社宅のようであり、またその隣には、学校のような建物も残り、そちらも恐怖に駆られながらも散策した。ちなみにこれら建物、大正3年から昭和44年まで稼動していた硫黄鉱山跡であり、そして学校跡のようなところもやはり鉱山中学校跡で、これら詳しいことはこのあと見学する松尾郷土資料館で知ることとなった。

松尾鉱山跡・廃墟です・・・
松尾鉱山・煙突
社宅アパート跡・・・

 鉱山散策を最後に残りを気持ちよく駆け下りる。下る度にあの極寒の山頂が嘘のようにモワッとした空気が漂いだし、そして蒸し暑さへと変わっていった。厚着している自分たちが異様に写るほどの温かさであり、下りきったと共に慌てて服を脱ぎだし、Tシャツ、短パンへとまた舞い戻る始末であった。ほんと嘘のようであり、とても今さっきまでのこととは思えないほどである。こうして下りきったところに先ほど書いた郷土資料館があり見学。またそこで先を急ぐ上中さんとも別れることとなった。また一人旅へと戻るが、しかし、この温かさを忘れず、また新たな出会いを共に期待し、固い握手の後、大きく手を振りながら彼を見送った。ありがとう!♪

 さて、自分もあまりゆっくりはしてられない。この後、また明日の登山に備えて岩手山の登山口まで上らなければならないのだ。またまた坂である!今日はほんと下りにしろ、上りにしろ坂しか走っていない。しかし、ただ走るのではなく楽しみながら走れたことが疲れを癒してくれ、また、まだ登らなければならないと言う意気込みが自分を支えていた。ほぼ下り終わったと同時に襲う上り坂も黙々と上りきり、そして17時前には無事に登山口のキャンプ場へと入ることができた。

 南部富士と言われている、これまた富士山そっくりの山容見せる岩手山を見上げながらテント設営。そして今夜はちょっと豪華に夕食を自炊。いや豪華と言ってもたかが300円ほどのオカズであるが、しかし、量は豊富で、またお味の方も格別!とくにヤリイカに舌を唸らせられながら、夕食を済ませ、そしてHPの更新と行きたいところであったが、そのあまりの満腹ぶりに動けず、また睡魔も遅い、そしてちょっと横になったら最後、そのまま就寝・・・ 今日は早い19時半の就寝となってしまった。


 ★今日のお食事♪
 ・朝食 : ごはん・インスタントラーメン(キャベツ入り)
 ・昼食 : パン×2・リンゴ・菓子
 ・夕食 : ごはん・コンソメスープ(餃子・五目はんぺん入り)・ヤリイカ

岩手山
ありがとう、上中さん!
松尾郷土資料館
今度は岩手山へ!
豪華な自炊♪



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