※コースタイム:酸ヶ湯温泉(10:40)~毛無岱コース~山頂(12:10)~5分休憩~仙人岱ヒュッテ(12:40)~1時間半休憩~酸ヶ湯温泉(15:00)
後から聞いた話だが、今日のこの寝床、雪中行軍茶屋は心霊スポットとして有名なところらしい。いかにもそれらしいところで、聞く前から何か不気味な感じがするなとは思ってはいたが、実際にそのようなところとは思わなかった。「出なかった?!」と聞かれるが、出たのは走り屋くらいなもので、幽霊はでることはなく助かったのだが、ただ、「キィーキィー!!」という走行音が0時ごろだっただろうか、うるさく寝れない時間があっただけで、あとは気持ちよく熟睡していた。ちなみにそんな今朝は5時起床、そして外は予想以上の激しい雨が叩きつけていた。
八甲田連峰の一部が時折顔を出すが、しかし、ほとんどは霧の中で視界はない。そして「ザーザー」という激しい音をたてながら雨は変わらず降り続ける中、今日も日記の更新から始めるが、そのあまりの雨に気落ちし、ペースははかどらない。いや、HPだけでなく、行動力までも低下し、自炊もする気が起こらず、今日の昼用にと持っていた2つの小さなパンを朝食用として食べ、それでよしとしてしまった。
八甲田山登山。この雨では気は向かないが、しかし、1日待ったところでも変わらぬ雨予報、さらには今日中に八甲田山を抜けて松森さんと待ち合わせしている谷地温泉へと行かなければならない。気が乗らないながらも出発するしかなく、登山のことも考えて日記を途中で諦めて8時前には自転車をまたがり漕ぎ出したのだが、しかし、数メートルでまた店の軒下へと舞い戻る。「パンクしているではないか・・・」(ToT)、小さな針金が犯人で、それをブツブツ文句を言いながら取り除きくのだが、しかし、こうして軒下があるだけでもよかった。8時半頃、改めて八甲田山の登山口のひとつ”酸ヶ湯温泉”目指して自転車をこぎだした。
昨日、あれだけ登ったのにまだまだ坂は壁のように立ちはだかる。せめてもうちょっと傾斜が緩やかならよいのだが、漕ぐのがやっとというこの壁では、もう常に必死であり、自然、汗は大量に噴出し全身を濡らす。さらには激しく降り続ける雨・・・ まずはズボン、パンツがビッショリになる。雨具の股の部分のゴアテックスが剥離してしまっているせいで、昨夜、ボンド、ガムテープを使って修復はしたが、しかし変わらず雨の浸透は激しくすぐに濡れてしまう。上半身も例外ではなく、撥水スプレー効果も薄く、前と変わらず雨は浸透し始めるが、一箇所だけ快適なところがあった。それは足だ。新規に買った靴だけに浸透はなく、いつものような気持ち悪さはそこにはなく、これだけは快適であったが、しかし、目の前の坂、そして雨は容赦なく立ちはだかり、行く手を阻んでいた。
「もういい加減にしてくれ・・・」と呟き、そして泣きが入りそうになったころ、1台の小さなバイクとすれ違った。他のライダー同様に軽く会釈しながらやり過ごしたのだが、しかし、どこかで見た気が・・・ そして振り返ると彼もそう思ったらしくバイクを止め舞い戻って来た。もう、この時には誰かを思い出し、久しぶりのその再会にただただ驚くばかりであった。あれは日本の最西端・与那国島での出来事、冬のキャンプ場でもなんでもない寂しい浜での野宿の時に知り合ったのが最初であった。そしてその島で2日ほど共にし、また石垣島でも再会をした。HN”作家”であった。ちなみにこの名前は作家志望ということから出ている名で、この方もちょっと変わっているだけに話していて面白く、また私も変わらぬ変わり者だからだろう。場所をなんとか坂を上り詰めて、酸ヶ湯の軒下へと移し、そして久しぶりに再会を喜び合い、そして語りあった。
しかし、この後、共に予定があるために、いつまでものんびりしている訳には行かない。作家は青森観光、そして私は八甲田登山。またの再会を約束して、変わらず雨降る中を仕方なく重い足を奮い立たせて登山へと歩み始めた。霧や風を心配したが、それに関してはほとんど襲われることもなく、また登山道は整備され、襲われたとしても迷うような道ではなかった。また山自体もハイキングコースのような山で、豪雨の中で登山道までも水は大量に流れ沢のようにもなっている箇所こそあったが、順調に標高を稼いで行き、約1時間半で山頂に上り詰めた。ただ、そこだけは深い霧と強風に見舞われ、もう寒いこと寒いこと、ジッとしていれば凍え死にそうな寒さであり、記念写真後、真横から叩きつける雨から逃げるように山頂を後にした。
山頂付近では始まりだしていた紅葉も楽しむということはない。もちろんこの天気のせいで、風雨は容赦なく遅い、そんな楽しむという気にはとてもなれず、寒気を防ぐ為にまたひたすら歩き出した。ただ、そんな山行でもちゃんと休憩もとった。そこは無人の避難小屋で、建物自体はやや古びた感じながらも、中はそれに反し綺麗で、さらにはトイレはもちろん毛布、椅子までも揃い、そんな申し分ない小屋で暖をとり、また雨が少しでも収まることを祈りながら休憩することにした。
寒い・・・ 小屋に常設された毛布も2枚被りながらも震え濡れた身体は温まらない。もう一歩も動く気すらせずただ震える身体が温まるのを横になりながら待ち続け、そしていつの間にかそんな状態ながらも寝てしまっていた。30分ほど寝ただろうか、それでも身体は温まらず、仕方なく震えながらまた濡れた雨具を羽織り、歯をガクガクさせながらも、止まぬ雨の中へと歩みだすこととなり、震えはしばらく収まらなかった。
それでも30分も歩けば、また身体は温まりだし、足場こそ雨の影響で悪いが、しかし軽快に足を運んで行き、そして15時、無事に元の酸ヶ湯温泉へと下山した。 そして冷えた身体を温めるために温泉へ!と行きたいところなのだが、しかし、600円という出費に頭を抱え、先日の靴のこともあるために、ここはグッと堪え、外のベンチでただ小さくなって身体が温まるのを待つことにした。もう、この東北に入る前から噂に聞き、楽しみにしていたこの温泉を前に、ほんと悔しくて仕方がないが、しかし、温泉が旅の目的ではなく、私にとってはただの娯楽である。削るのはここしかない。そう自分に言い聞かせ、その温泉を前にしながらも寒さで震えていた。
雨は一向に止む様子はない。小雨ならまだしも、呆れてくるほど今も強く降り続いていた。しばらく震えながらも雨が収まるのをまったが、しかしタイムリミットの16時、今日の待ち合わせ場所”谷地温泉”へと向うべく、止まぬ雨の中、寒さを堪えてまた漕ぎ出す。容赦なく襲う雨と、そして上り坂、傘松峠まではそれほど大した上りはないのだが、それでも、あらゆる苦痛が多いだけに果てしなく続いているように感じ体力、気力共に奪っていく。しかしその気力を必死で奮い立たせ漕ぎ進め、そしてなんとか越えた峠の先では、さらなる寒気が襲うことになる。濡れた身体は熱を奪い、ブレーキを握る手は悴み、その冷たさのあまり感覚はなくなるどころか、指が攣る始末でもある。それでもブレーキを力一杯握らなければ雨の下り坂に耐え切れない。上りよりもキツイ秋の下り坂であった。
山腹まで下りきれば、もうそこは目的の谷地温泉。逃げるようにして駆け込んだその一軒宿は決して大きくはないのだが、400年の歴史ある温泉がそうさせているのか人で賑わっていた。そんな中へ場違いな自転車、さらにはどこからどう見てもお金の無さそうで、泊り客には到底見えないだろうが風袋ではあり、そう自分で思っているからこそ、なんだか入り難くはあったが、事情を話、宿の休憩室で松森さんの到着を待つことにした。
★今日のお食事♪
・朝食 :
パン×2・おにぎり×2
・昼食 : おにぎり×2
・夕食 :
豪華!旅館の夕食♪