礼文島・利尻島、いままで全国各地の旅人たちに「あそこは必ずいってね!」、と耳にタコが出来るほど聞いてきた島。それだけに期待も大いに膨らみ、胸を高まらせての朝だった。だが、すぐに向うわけではなくフェリーは夕方便にし、それまでこの稚内を観光しようかと思う。だが、この昨夜寝た異型な北防波堤ドーム、フェリーターミナル前ということもあり、朝市の便で乗り込む人たちが多いようで、早朝から慌ただしくテント撤収が各所で始まり、そして私もHPの更新作業にと力が入るが、電源が取れないこともあり、かなりのピンチ状態・・・ 溜まった日記を書くことがほとんど出来ないまま私もテント撤収し、そして電源求めて各地をウロウロし始めた。
フェリーターミナルも×、公園も×・・・ 昨夜、登りを断念した森林公園へと今日改めて登っていく。もちろん荷物満載の自転車は下へと置いてはきたが、それでもキツイ坂だけに息が自然と上がってくる。この稚内の観光地はこの丘の上に集中し、その観光の為に、そしてこの公園に電源を求め、まだ7時前と言う時間に、ただひとり公園へと足を上げていった。
そんな公園で場所こそ一目に付き落ち着かないが、それでも緊急事態とそこで電源を拝借しながら改めて日記に更新作業に入った。だが、時期に係員の方が来て、注意こそされないが自ら撤収、近くの東屋へと移ったが、丘の上だけに風も強くその肌寒さに震えながらの苦しい作業。もうさすがにきつい・・・ そう悲鳴を上げ始めたころ、無料休憩室が開放され、迷わず逃げるようにそこに移動し、ようやく本格的な日記更新作業へと入った。
日記を溜めていただけに、この朝の時間だけではとてもやり終えることは出来なかった。後はフェリー内で頑張ろう・・・ そう自分に言い聞かせて止むおえず終了させ、観光へと歩き始めた。この公園周りには至る所に記念碑や記念像が建てられている。その中でもとり際、目を引くのが”氷雪の門”という大きな塔、これは樺太がまだ日本の統治下にあったころ、その地で亡くなった人達の慰霊のために、また、その故郷の望郷の思いから、この昭和38年建てられたものだそうだ。他にも”九人の乙女の碑”、”南極観測樺太犬記念碑”など、樺太に関わる碑が幾つも建てられ、今は遠い国ともなってしまったとはいえ、その土地との縁の深さをこうしてまじまじと感じさせられた。
さて、この公園のメインの観光地と言うべきところだろうか、残すは一番楽しみにしていた”北方記念館”という稚内の開拓当時の様子、樺太の資料等が展示されている所だそうだが、ここに来て、時間が残念ながら押し迫ってきた。急いで見学すれば見れなくもないのだが、そんな慌ただしく見ても楽しさが半減してしまうだけだろうと思い、悔しいながらも、今回この記念館は利尻・礼文からの帰路に立寄ることにし、やや未練を残し、市街へと続く急坂をゆっくりとまた下っていった。
込み合うフェリーターミナル。こんなに利尻、礼文へと渡る人たちがいるのかと驚かされるほどであり、また島がパンクしないかとも思ってもしまうほどであった。私の乗り込む船も車両甲板、乗客共に満員で、自転車の乗船が遅れたことから、席はすっかり埋まり、座る場所さえない状態であった。それでも詰めてもらいなんとか落ち着くことが出来たが、とてもこんな状態でPCを立ち上げ日記を・・・ さすがに出来ずに小さくなって読書を楽しむのがやっとという有り様の中、時期に睡魔に襲われいつの間にか寝てしまっていた。
「乗客の皆様・・・」、そんなアナウンスで目が覚める。入港だ。甲板に飛び出し近づく島を仰ぎ見るが、しかし残念ながらそこに聳え立つはずの利尻富士は雲の中に隠れ眺めるはできなかった。ただ、予想以上に小さな陸地が見えるだけであったが、でもその中に一際目立つ岬にあった。決してそれほど大きいとは言えない半島だが、先端に行くにつれて盛り上がる隆起が凄く印象的で、海から見たその岬は断崖絶壁になっていることもあり、その荒々しさも含め、自分の目にとても印象的にその岬が焼きついた。まずはターミナル内で観光地図など頂き情報収集。さっそく観光だ!とも行きたいところなのだが、島周遊という時間はもうすでになく、また今日泊る予定のキャンプ地はこの市街のすぐ上と目指すところも間近である。このままキャンプ地へ向っても・・・ と港でダラダラ、どうしようかと迷っているときに、また目に入ったのが、先ほどの岬、”ペシ岬”だった。惹かれるその風貌、そして、あの上からまだ見ぬ町並み、そして島を眺めてみたい、どんな島だろうか、観光する前に眺めてみようと、登ってみる決心をした。ただ、決心するというほどの山でもない。ものの10分ほどで登頂できてしまうような山だが、しかし、そこは、まるで地上とは別世界、三方絶壁の眼下には青過ぎる程の海に囲まれ、そして唯一繋がる陸地には予想以上に小さく素朴で可愛らしくも見える集落が望め、その先には、何もないだだっ広い草原が島の周囲を囲っていた。もちろんその上には、島中心に向って尾根が伸び雲の中へと入っていく。そして未だに顔を出さぬ利尻富士がそこに聳えているのだろう。どんな山だろうか、写真で見たあの美しい山容をそこに当てはめながらも、実際にほんとうにこのように見えるのだろうかとも疑問を抱きながら、しばらくその僅か100m足らずの山頂で、心地よい風に吹かれながら、島の時間を楽しんでいた。
島、とくに私が今までの町で見てきた歴史観光と言うのはほとんどない。ただ、山に登り、そして島を周遊し、綺麗な景色を見よう。そんなところなのだが、どれもこれも明日以降の話。今日は今、何もすることがなく、ただボーっとこの島を見下ろしていた。すでに2時間にもなろうとしている。自分でもビックリするほどこの岬が気に入っていた。そしてわずか周遊60kmほどの小さな島だけに、動いてもすぐに行き着いてしまう島だけに、今はこうしてボーっとしているしかない。そんな島での時間、島だからこその時間をここで楽しんでいた。本当なら日記をやらなきゃいけないのに・・・ そんなことを、忘れた頃に思い出し、でも、やらなきゃなと思わしても、岬は私を放さないでいた。
この岬で何時間もいたのには、ただ景色に魅かれた以外にも、もうひとつ理由があった。それはここである人を待っていた。それは北海道最高峰の地でお会いした”たまちゃん”。すでに昨日、この島に入ったと言うことで、今日は自転車で島周遊を楽しんでいると言う。そろそろ、来るのではないかと、何時に来るかも全くと言ってもいいほど分からないのに、なんとなく、飽きないこの地でその到着を待っていたのだった。
登頂してから2時間以上はたっただろう。それでも飽きることなく島をいつまでも見下ろしていたとき、電話が鳴った。島も周遊してきた”たまちゃん”からだ。さっそく「ここにおいでー」と声を掛けるが、当のたまちゃんはさすが風に立ち向かい周遊してきたばかりとちょっとお疲れで、「登るのは・・・」という具合であったが、しかし、ちょっと強引に誘い仕方なくと言った感じの登頂してきたたまちゃんが発した言葉は、「凄いね!」、「絶景だね!」、「気持ちがいいね!」、そんな声はかりであった。そして最後は「登ってよかった、また登りたいよ!」といった具合に私共々こうして大満足の山頂であり、また再会を喜び合うと当時に2人して展望を眺め続けていた。
日暮れ前、ようやく2人、やや後ろ髪惹かれる思いながらも下山して、スーパーで買出し後、山の山麓にあるキャンプ場へと向った。途中、明日の登山の安全、そして天気を”利尻山神社”に祈り、そして長い長い坂を越えていき、無事に北麓野営場へと到着。そこで今夜は2人楽しく夕食を自炊する。いつもなら面倒なこの自炊も2人だと不思議と楽しい。そしてその食事も驚くほど美味しい。だが、楽しい時間はあっという間に過ぎるのが悲しく、またそれに追い討ちをかけたのが雨・・・ パラパラと降りだす雨に眉をひそめながら、明日に備え就寝した。残した日記を苦にしながら・・・
★今日のお食事♪
・朝食 : パン×2
・昼食 : コンビニ弁当・パン
・夕食 :
ごはん&マーボー豆腐