※コースタイム:起床(4:30)~出発(6:30)~美瑛岳(9:00)~ベベツ岳(11:30)~オプタテシケ岳(12:40)~50分休憩~双子池キャンプ地(14:30)
短い北海道登山シーズン。今がベストな時期だとも思うのだが意外にすれ違う登山者は少なく今日一日歩いても10組程度であったが、でもそんな中でも楽しく、また意外な出会いが待っていた。それは今朝にも待っていた。昨夜泊ったこの上ホロ避難小屋、私の他に3人居たのだが、みんな寝るのも早かったが朝もさすがに早く、1人は4時には出発し、そして私がセッセ準備していることいつの間にかもう一人と出発して行き、結局この2人とはほとんど話すことなく分かれたのだが、のんびり朝の時間を楽しんでいた最後の一人とは出発する前ちょっと雑談。話してみるととってもいい感じの方で、昨夕のあの小屋へ入った時のあの暗さはどこにもなく、いや、ないどころか、とても楽しく朝の時間を過ごし、お蔭で晴々とした気分での今日の出発となった。ただ、そんな気持ちに反し、今日も昨日変わらず空は雲で覆われていた。もちろんそのために朝日を拝むことは出来なかったのだが、しかし、展望の方はというと良好で、富良野の町を一望でき、また場所によっては雲海も広がり、そして何よりこの朝の空気がなんとも言えないほど気持ちよく、深い深呼吸を合図に今日の一歩を踏み出した。
この辺りの山々の主峰とも言える十勝岳。もうその肩ともいう位置まで来ていた為に、一汗かけばもうそこは山頂である。そこから見下ろす世界は他の山とは大きく違うだけにもう感動もので、しばらく魅入ってしまうほどであった。なにせ、一面、死の世界なのである。木々の一本どころか草もない。何もない荒地だけが眼下に広がっているのだ。もちろんこれは火山の影響であるが、しかし、それにしても日本とは思えないあまりのその景色に言葉を失いっていた。
そんな山頂、登頂当時はまだ誰も居なかったが、そのあまりの景色に魅入っていると、1人、2人と登山者が上がってきた。共に道内の方で山の話などいろんな事をここで聞かせてもらった。やはり今年は冷夏で残雪量も例年より多いそうだ。この黒々とした荒れた山肌だけに、それら雪がより浮かび上がって見えた。その中でとくに面白かったのが、鋸岳を北から見た残雪で、それが私にはまるで笑った顔のように見え、思わず私もそれにつられて笑みを溢してしまった。
この先の美瑛岳付近までは、こうした火山灰・礫の荒々しい死の道が続き、その西側は噴火が作ったのだろうか、恐ろしいほどの絶壁で無論こちらも草木は延々となく、眼下はまるで死の世界の入り口のようかに見えるほど落ち込んでいた。美瑛岳、名前から丘のような美しい山というイメージを思い浮かべるが、実際はこのように荒々しい。ただ、北斜面へと周ると草木も数こそ少ないが茂り始め、荒れたこの大地だけに生命の強さを感じさせられた。
お隣の美しい山容の美瑛富士を眺めながら美瑛岳を越え、今日の最後のピーク”オプタテシケ山”へと目指した。高山植物の可憐な花々が道中至る所で迎えてくれ、足取りを楽しませてくれながら、また今日も昨日に引き続き、雲の芸術を空と山々が演出してくれた。時には雲海、時にはその雲に自分も飲み込まれ、かと思うと、見る見る雲は晴れ始め気付けば、辺りの雲は晴れ渡る。そこにナキウサギがヒョッコリ顔を出したりと、そんな演出に今日も魅せられながら進んで行ったのだが、決して良い事ばかりではない。時折、今日も小雨に降られ、やや気の重い山行ではあったのだが、でもそんな演出と、澄み渡る眺望に惹かれ、眼下に富良野、美瑛、そして目の前には最終目標である表大雪も連なり常に楽しませてくれていた。
目指す”オプタテシケ山”。この周辺の山々に比べればマイナーな山だろう。この大雪山を縦走する方くらいしか実際は訪れないのではと思うほどの山で、実際その山容自体もそれほど惹かれるものはない。そんな山なのだが意外に日帰り登山者が多いのには驚かされた。多いといってもわずか数組であるが、山が山だけにそれでも不思議である。実際にそんな登山者に話を聞いてみても「マイナーな山だよね!」と笑いながら返ってくるから面白い。ちなみにこの山の山頂でも、ある一組の日帰り登山者にお会いしたのだが、ここで信じられない様な偶然が待っていた。山頂でやはりお互い山好きなだけに山の話で盛り上がるのだが、その中でもこのマイナーな山について聞いてみた。するとまたまたここもマイナーな山、日高連峰の北戸蔦別山にも先週登ったと言う。私も先日、その山を経由して幌尻岳に登ったので益々会話が弾んだのだが、そこで自転車の方を見たという話になった。「えっ?うそ?」、と思い日にちを合わせてみると、やはり同日。確かに思い起こせばあの日、一組の方にすれ違ったのを覚えていた。何しろ、その北戸蔦別山間ですれ違った方は、この一組のみで「珍しいな、こんなマイナーな山で・・・」と思いながらあいさつを交わしただけに強く印象に残っていたのだ。このあまりの偶然にさらに会話も弾み、山頂でしばし、ふれあいの時を楽しんだ。
出会いと言えば、やはり同じようにこの大雪山を何日も掛けて縦走されている方とも何人かとすれ違い、そしてやはり同じ苦労を分ち合っているだけに、ついついお互い話しかけてしまう。今日も2組の方とすれ違ったのだが、共に情報交換したり、また愚痴を言い合ったりと楽しいホッとするひと時となるのだが、とくに、このオプタテシケ山直下で出会った方とは会話が弾み、最後はもう明日下山するからと貴重なパンまで分けてもらってしまった。ありがとうございました!
こうして今日はいろんな方とふれあいながら、いつもよりものんびり登山を楽しんでいった。このオプタテシケ山から今日のキャンプ地までもう目の前で、そんなこともあり、こうして山頂でのときを充分楽しんでから向ったのだが、この目の前のはずのキャンプ地、正確にはすぐ真下であった。崖のような下り、標高500m以上を一気に駆け下りたところが今日のキャンプ地で、眼下に広がるのは一面の緑の海原だけに、その中にポツンと浮ぶすでに設営された1つのテントが異様にその中にあって浮かび上がり、そのあまりの下方にあるキャンプ地に呆然としばらく見下ろしていた。
長い長い下りを足の痛みに堪えながら必死で下っていき、そして14時半、無事に到着することが出来たのだが、そこは雪解け水こそ確保できるが、ジメジメした大地で決していいキャンプ地とは言えない所であった。だが、それでも、自分にとってはもうここしかなく、またやっと休める、やっと到着した、そんな思いから、そこが天国のようにすら見えた。
小雨が相変わらず降ったり止んだりする中、慌ただしくテントを設営し、そして、ようやくゴロリと落ち着き、そしてそのままお昼寝タイムへと突入・・・ 1時間ほどのこうしてのんびり身体を休め、それから自炊、日記と、いつの間にか深い霧で包まれてしまった外を覗きながら進みていた。明日は本格的に天気が崩れるそうだ。不安もいっぱいだが、でもそんな中で、何が待ち望んでいるのか期待もいっぱいで、21時頃眠りについた・・・
★今日のお食事♪
・朝食 : ごはん&レトルト丼
・昼食 : パン・チョコ・カロリーメイト
・夕食 :
スパゲティー・ラーメン