※コースタイム:宿出発(7:00)~白金温泉(11:30)~吹上温泉(13:20)~20分休憩~十勝岳温泉(14:50)~登山口発(15:00)~上富良野岳(17:00)~上ホロ避難小屋(17:30)
こんなに歩いたのは初めてだ。それもテント、さらには7日分の食糧を積んでの重いザックを背負っての約35kmほどの道程。今日一日、何度もその歩くと言う辛さと戦い必死で乗り越えて、こうして今、歩き終えた達成感を胸いっぱいに抱き、のんびり山小屋での時間を過ごしている。
そんな長い一日は、やや寝不足の朝で始まった。なにせ昨日寝たのは1時過ぎ、さらには熟睡もろくに出来ずに5時半起きというから寝不足も当たり前だ。ちなみにもちろんこれには理由がある。昨日の日記にも書いたが、どうしても登山に行く前にそれまでの日記を書き終えたくて、遅くまで頑張ってしまったことがひとつ、また、ようやく終えて寝ようと思っていたとき、なんと0時過ぎと言うのに、「今からでも大丈夫ですか・・・?」とお客さんが・・・ それもなんと2人の女性ライダーであった。さすがにこれには驚き、「えっ?どうしたんですか?こんな晩くに。」、と眠い目を擦りながら問いかけた。話を聞くとやはりトラブルが続き、あげくの果てには予定した宿にも泊れず路頭に迷い、そんな時に見つけたのがこのライダーハウスだったそうだ。でも、もし私が早く寝ちゃっていれば、もう明かりはなくここにも辿り着けなかっただかもしれない。起きてたからこそ、こうして人が助かり、「よかった、よかった♪」と思いながらも、しまった!と時計を見て驚き、寝袋に包るが、彼女たちの片付ける音になかなか落ち着かず、また電気もそのまま付けっ放しと言うこともあり、熟睡もままならなかったという訳だ。こう書くと、なんだか彼女たちを攻めているようにも聞こえるかもしれないが、でも実際は”本当によかった♪”と思い、また、これが自分だったらとも思ってしまう・・・
まあ、こんな事もあったが、今朝も元気に青空広がる空を見上げながら7時にRHを出発した。ちなみに冒頭にも書いたが今回の登山は徒歩でのアプローチである。理由は縦走したいためで、そのためには、ここ美瑛をベースにするのが一番良く、最後、旭岳を周ってこの美瑛へとなんとか歩いて帰ってこれる位置にあるからだ。ただ、その距離は半端ではなく、行きも帰りも共に30km前後の車道を歩かなければならない。でも、その苦労があるお蔭で”縦走”という登山を楽しめ、また一挙に100名山のうち3山を登頂できてしまうのだ。ちなみにこの歩く(人力)ということに関して私にはこだわりが(夢)あり、それは、何度もこの日記で書いてきたと思うが”人力100名山登頂”という一切動力は使用せずに人の力だけで標高0mの地から100名山全てに登頂するということだ。そのために今まで、バスにも乗らず、またヒッチハイクどころか、「乗って行くか?」と誘われても、その気持ちだけをもらい頑張ってきた。今回もその夢の為に30kmを歩き通し、そして登山へと向うつもりだ。その夢への意気込みを胸に秘め、6日間と登山の第一歩を踏み出した。
ザックの重みが「これでもか!」という勢いで肩に襲いかかる。さすが過去最高の7日分の食糧を背負っているだけのことはある。だが、へこたれることはない。これも前回、幌尻岳を1泊2日の登山に出たというお蔭が強いかもしれない。あの後、筋肉痛にかなり悩まされたが、今回はそのお蔭でその心配はなかった。また、この苦痛を乗り越える力、もちろん一番大きいのはそれよりもやっぱり最後は自分自身の精神力であり、それ自体を支えているのが、この日記をこうして見てくれている読者たちであると思っている。”ありがとう” 、そう感謝しながら、私にとっては未知の世界である30kmという徒歩の道程に挑み歩き始めていた。
歩けど歩けど道は果てしなく一直線に北海道らしく伸び、辺りは進めど進めど変わらぬ一面の農園の景色が広がっていた。そんな代わり映えしない道であるが、常に前面には目指す山々が聳え、まだまだ果てしないと言っていいほど遠い遠い存在ではあるが、でも一歩一歩その山へと常に見つめながら向っていけるのが嬉しく勇気付けた。ちなみに天気の方はあの朝の快晴が嘘のように今は雲が広がり、いつの間にかどんよりした空となってしまっていが、ただ、それでも常に山が前に聳え立っているのは望め、それを目標にまた励みに出来たのが、精神的支えのひとつともなった。
ただ黙々と歩き続けていた。もう頭の中は無の世界である。そうでなければとても歩き続けられないほど私にとってはこの30kmという道程が長く辛かった。また、休もうかとも思っても、その1度休んだときの次に踏み出す第一歩、その足の重さが怖く、休憩もほとんどとらず無我夢中で4時間半と言う時間を歩き歩きとおして、目指す十勝岳の麓”白金温泉”へと入った。ちなみにここまではほとんど登りはなく平坦な道で、ただ、それが楽であったか?とそう言われればやはりそうではなく、とくにこの固いアスファルトの路面が足に負担をかけ、この巨大なザックも含めて、全身の重みが掛かる足の裏。一歩踏み出す度に、痛みが走るほどで、最後はもう悲鳴を上げたくもなったが、でも、この白金温泉を越え、登山道へと入ってからは痛みがだいぶ和らぎ、このあともなんとか歩き続けることが出来ていた。
ちなみに今日のルート、当初の予定では本格的な登山に入らず、このすぐ先の白銀荘キャンプ場で宿を求めようと思っていたのだが、予定よりも麓に早く着いたことや、、また今後天気が崩れてくると言う予報から山の見える今日中に展望の効く稜線まで登ってしまおうか、また、どうせなら麓で泊るよりも稜線で泊り、夕日、朝日を楽しみたい、そう徐々に欲をかき始め、そう思った時にはすでに今日の目標を稜線の無人避難小屋へと変更し、さらに黙々と足を進めまた車道を進んでいた。
登山道、車道と併用しながら痛む足に負けることなく歩き続け、そして今日の楽しみのひとつであった無料露天風呂”吹上温泉”へと到着し、ここでようやく大休止。とは言ってもたかが20分の早風呂。頂きを目指すことにしたために、それ以上ここでのんびりしている時間が取れなかったこともあるが、それ以外にも有名な露天だけに人が多く落ちつかなったという理由もひとつあった。
まだまだこの先も辛い車道は続いた。目指す登山口は”十勝岳温泉”。終盤はS字の急な道が続き、もう足は悲鳴を上げていたが、それでも気力で足を運び、15時ちょっと前には無事にこの登山口へと入ることが出来た。だが、のんびりしている時間はない。お次は本格的な登山道が待っている。ここから先はもう本格的な山行が6日間続くこととなり、ここで自販機とも見納めだ!そう思いちょっと贅沢にコーラをガブッと頂いて、最後のエネルギーを摂取し、気合を入れて稜線へ、そして小屋を目指し新たな気持ちで登山道へと入って行った。
朝の快晴はなんだったんだろう。時折小雨さえ降る悲惨な天気へと変わっていた。それでも霧に覆われると言うことなく、視界は常に良好で、目指す雄大な山々を見上げながら登って行くことはできた。そんなこともあり、この時折の小雨もそれほど苦に感じることはなく意外に気持ちよく登っていくことはできたのだが、しかし、この疲労だけはもう隠せなくなっていた。足は異常に重く痛い。また気力は勝っても身体の方は完全にバテ、ちょっと歩いては立ち止まってしまうほどで、思うようになかなか進めない。だが、それを笑うかのように急坂がどんどん目の前に立ちはだかり、それでも一歩一歩踏み出していくが、踏ん張りは全く利かずふら付くばかり・・・ だが、そんなときに思わぬ雲の芸術を見せてくれた。天気は一変し、晴れ間が覗いたせいか、雲は下方よりニョキニョキと湧き上がり、あっという間に雲海が広がり、いや、それでも収まりきれずに、自分を、山を飲み込む勢いで雲はどんどん迫ってくるが、でも太陽が蔭ると共に、見る見る雲は収縮して行き、わずか数分で先ほど襲い掛かってきた雲は全て消え去ってしまっていた。そして眼下にまだ見ぬ荒々しい安政火口が、そしてそれに反し、穏やかな優しい印象を受ける富良野岳が再び姿を現した。そして噴煙を上げる十勝岳も奥に聳えている。それら目まぐるしく変わる展望にすっかり見せられ、最後は疲れさえ忘れ上富良野岳(1893m)へと登頂した。
すでに17時をまわり、空には依然と雲が広がり辺りはすでに薄暗くなりつつあったが、ただ、展望の方は未だ良好で、富良野から美瑛と広がる農園地帯が見事に一望でき、そして一転、反対の東の空には雲海が広がりそれらに浮ぶようにして山々が連なり、その見事な展望をしばらく楽しんだ後、のんびりと今日の寝床、上ホロ避難小屋へと入った。 ★今日のお食事♪
・朝食 : 半額弁当・おにぎり
・昼食 : パン×2
・夕食 :
ごはん&レトルトカレー