今朝はかなり冷え込んだ。あまりの寒さに寝袋に頭までもぐって寝た。それでもそれなりに良く眠ることが出来た。6時に起床。テント内の気温は3度・・・ さすがに寒くなかなか寝袋から外に出ることが出来なかった。そんな状態でテントの換気穴から外の様子を伺ってみてビックリ!!なんと一面真っ白ではではないか!あまりに驚いて外に飛び出そうとすると、なんとテントも風によって雪でここまで運ばれ半分、雪化粧していた。そんな雪を払いながら外に出て見ると、積雪は20cm~30cmほどもあり、膝下まですっぽり埋まる。そしてその雪は未だ降り続いていた。雨(雪)が降るんなんて言ってなかったのに・・・ どういうことだろう?! 冬型が強まったせいだろうか?!訳の分からないまま、一夜にしての雪景色を楽しんでいた。でも登山はなんとかなるにしても、自転車での下りはどうしよう・・・ 帰れない・・・ そんなことを心配しながらとりあえず、凍える寒さの中、テントを片付けた。ちなみに今朝の気温は”-5℃”であった。
こんな寒さの中でもご飯はうまく炊けた。食事後、いよいよ登山開始!時間は8時過ぎ。雪をしっかり踏み込みながら慎重に登りはじめた。この剣山登山、雪山を想定して来ただけにちょっとこの雪は嬉しいのもあった。そんなことだから、けっこう楽しい。でも、この降り続く雪は予想外であった。展望はなく、そして誰もいない雪道にトレース(足跡)をのこしながら登っていった。まだ動いていない登山リフトを横目に徐々に標高を稼ぐ。誰も掻き分けていない雪道だけあって通常の倍ほど体力を要するだろうか。さすがに暑くなってきて、1枚、また1枚と防寒着を脱いでいき、終いには中はTシャツ一枚でも暑いほどだった。
1時間ほど歩くとリフト頂上へと到着した。今日も運行予定だろうが、まだリフトは静まりかえっていた。いや、全てが静かであった、静かに雪が降っているだけである。そんな静けさの中、景気付けに歌を歌いながら登っていった。するとある巨岩が見えてくた。さらに見覚えある神社が・・・ 大剣神社であった。じつはこの剣山、去年の夏に反対のジロウキュウ側から登ったことがあるのだ。そのときも雨のため展望はまったくなかったが、今回2度目の挑戦だが、この天気では展望は絶望的だ。悔しい~!! そう思いながら、懐かしい大剣神社を越えて行った。ここからそれほど歩くことなく、山頂小屋へ到着。営業中との札はあがっていたが、人気はなかった。そこを越えると山頂の広いザサの丘が広がるのだが、ここにでると、風がものすごくなる。いままで暑かった身体も急に冷えるが、いまさらここでまた着込む気もせず、そのまま進む。そしてちょうど10時に吹雪の中登頂。凍える寒さの中、写真だけは必死に撮ったが、顔に笑顔はもちろんなく強張っていた。
あまりの寒さにと展望のなさのために、すぐに下山へと向かった。下山は雪のおかげでけっこうラフに降りることができ意外に楽であった。順調に下っていき、11時前には元の駐車場に下山することができた。せっかく晴天を見計らって、一日ずらしての登山だったのに、残念ながらあいにくのこの天気で展望はなく、ガッカリ登山であったが、それでも雪山を楽しむことができた。
下山後の気温もまだ氷点下、その中、荷物を詰め替えて、いよいよ恐怖の自転車での雪道下りへのスタートだ。実は今日、下ろうか迷った。まだ雪は降り続きやみそうもなく、この中、下っていきたくはなかったが、ここにも屋根があるとはいえ、この寒さを防ぐ居場所がないために、早く下りたかったということもあって、ちょっと強行で走り始めた。だが、不安はいっぱいだった。こんな除雪車も入っていない高々と積もる雪の中、本当にくだっていけるのだろうか・・・ 車が来た場合、避けれるだろうか、また滑って谷底へ落ちないだろうか・・・ 書ききれないほどの不安が襲う。そんな中のスタートであった。
さすがにサドルはいっぱいに下げて足つきを良くし転倒に備える。また足がブレーキの役目もした。いつ車が来ても止まれる様に、また曲がれるようにと、スピードを限界まで抑えて下っていった。もちろんブレーキは常にフルブレーキ状態。そんな状態だからなおさら手の血行は悪くなり、指先は凍るように冷たくなった。途中、なんどもあまりの冷たさに力が入らなくなり、止まっては手を動かし、血行を促し温めた。また、2、3度はやはり転倒もした。怪我はなかったが、そのときだろうと思うが、荷台にとめてあった行動食(菓子)がどこかへいってしまった。また途中から雪はみぞれへと変わり、それが顔を当たって痛いこと!さらに雨も混じりだし、手袋は濡れ、さらに手は冷たくなり、身体もさらに冷えた。冷えて当たり前だろう、ひたすらの下りで、自転車を漕ぐことなく、ただ、バランスをとりながら下るだけなのだ。温まり様がない。元気付けるために、ただ一人馬鹿のように歌を歌いながら下っていった。
途中、除雪車とすれ違い、その後はやや走りやすくなった。さらに路面の雪はシャーベット状へと変わっていき、なんとか進める状態にまではなったが、それでも滑ることは滑る。また、寒いこともあって極力スピードを抑えて下っていった。途中、ある交差点で立ち往生するトラックに出会った。もちろん見捨てては置けずに話を聞き出来るかぎり手助けしようとはするが、なかなか難しい。あまり役にも立てずに、なんとかトラックの救助は成功。でも、運ちゃんは、ろくになにも出来なかった私に厚くお礼をいってくれ、またお礼にと餞別まで頂いてしまった。ありがとうございました。
ちょっと気分を取り直して、また力強く進みだした。でも寒さは変わらない。相変わらず、冷たいみぞれ交じりの雨は降り続いていた。それでも、がんばって進んでいったのだが、こんなときにアクシデント発生!なんと前輪がパンク・・・ この冷たい雨の中、修理する気にもなれず、どこか雨を凌げるところはないかと、テクテク歩くしかなかった。気分は一気に最悪の状態へ・・・ もう泣きたくなってくるほどであった。歩き出して数分、ちょっとした村落へと入った。そこで屋根つきのバス停を見つけて、ここしかないとそこへ避難。なんとかここで雨を凌ぐことはできたが、あまりの寒さにパンク修理する気も起こらずに、しばらくそのまま身体の回復を待った。
未だ雪が積もったこの自転車のパンク修理は予想以上に大変だった。自転車は凍りつくように冷たく、手が思うように動かない。それでも、修理するしか進む道はなく、必死に冷たさを堪えて修理した。結局、チューブの穴は分からずにチューブさら予備と交換。そしてすぐ出発と行きたかったが、まだそんな元気はなかった。また、天気は回復に向かうとの予報も期待して、雨の止むのをそこでまったが、いつまでも冷たい雨は降り続き、止む気配はなく、しかたなく14時半に再出発した。
さらに下っていくと、雪はすっかりなくなり、また完全な雨へと変わっていったが、気温だけはそれほど上がることなく1度ほどしかない。ただ、嬉しかったのは、雨が小雨になってきたこと、美しい展望が姿をあらわしたことだ。その展望とは綺麗な紅葉と、その上に広がる雪山。そしてその下に流れる渓流。この苦しみがあるからこそ、より美しく幻想的に見え、それに感動し涙した。また、16時をまわった頃には所々晴れ間も顔を出した。そんなちょっとした青空がほんと嬉しかった。この青空を見てこれほど感動したのはたぶん私が一番だろう。そう思うとこの苦しさも喜びに変わる。不思議なものだ。
こうして、有名なかずら橋を越えて今日の寝床を予定している道の駅を目指した。ちなみにこのかずら橋も以前に渡ったことがあるために、今回は写真だけでよしとした。それほど感動はしなかったが、ただすごく懐かしかった。
こうして17時前、なんとか道の駅に到着。そして、ちょっと高かったが奮発して、すぐ隣に立つホテル秘境の湯の温泉に入ることにした。またこのレストランで豪華に夕食もとった。まさに地獄から天国であった。こんなに温泉が気持ちよく感じたのはいままでなかっただろう。思う存分、その幸せ気分を満喫して、20時頃にまた道の駅へと戻った。
この道の駅、嬉しいことに休憩室が24時間空いている。その温かい室内にテントを張って就寝した。まさに地獄の後の幸せだ♪