車輪人の自転車日本一周・登山の旅 車輪人の自転車日本一周・登山の旅

2003年 9月27日 (土) - 447日目

天気 : 晴のち曇

体調 : 良好

宿泊地 : 宮古市郊外の小公園

本日の移動 : 大迫町~早池峰山登山~川井村~宮古市

走行距離 : 77.2km

累計距離 : 20,292km
本日の出費

食費 : 0円

観光費 : 0円

宿泊費 : 0円

雑費 : 0円

費用詳細 :

現在地 : 岩手県宮古市  ( 全走行図 )

エネルギーの源

 ※コースタイム:早池峰ダム(6:50)~河原坊(9:00)~登山開始(9:20)~早池峰山山頂(10:45)~下山へ(11:15)~小田越峠(12:05)~河原坊(12:30)

 道の駅・休憩室。そんな暖房のかかった温かい部屋で過ごした夜。走り屋の騒音にも悩まされたりもしたが、それでも朝方はそれなりに熟睡できた。今朝は5時半に起床、今日の天気は晴れ、そんなはずであったが、なんと外を見れば道路は濡れているではないか!それもさきほど降ったばかりといった感じであり、また水溜りまでできるほど降ったようでもあった。さすがにこれには驚いたが、その不安な空を見上げれば雲はすでに切れ掛かり、とりあえずは大丈夫そうである。自炊、そして残りの日記を書き終えて、7時前には早池峰登山へと向けて朝の清々しい空気の中、自転車を漕ぎ始めた。

早朝の早池峰ダム湖
目指せ早池峰山頂!
神聖さ漂う参道

 今日の出発地点、このダム湖の標高は僅か200~300mしかない。今から1250m近い峠へと挑むだけに標高差は半端ではなく、さらにはそのあとに早池峰登山が待っている。過酷な一日となりそうでうだが、その分、手に力は入り気合も入る。しかしそれほど気合は入ったものの目の前に立ちはだかる坂は拍子抜けするほど緩やかで、最初のうちは気持ちよく距離を伸ばして行った。そして、あっという間に峠までの距離的には中間地点である”早池峰神社”へと到着した。ここで休憩と登山の安全を兼ねて参拝。古びた石段を上れば杉並木が続く赴きある参道が迎えてくれ、参拝雰囲気を高めてくれていた。この早池峰山、信仰の山としても有名で、山伏神楽と呼ばれる舞曲する能舞台のようなところまで設けられ、また伝承記念館までも併設され、歴史を今も物語ると共に、ちょっとした観光地ともなっていた。しかし、今は誰もいない静かなこの赴きある神社で安全祈願ををし、また自転車を漕ぎ始めた。

 残りはわずかに6km。すぐつくだろうと思いながらも、まだほとんど上っていない標高に不安がよぎる。案の定、この先、道は狭くなると同時に坂と言う言葉にもう当てはまらないのではないかとも思ってしまうような激坂が、蛇行することなくほぼ真っ直ぐ峠へと向けて走っていた。延々と続くまさに壁で、それを見上げた時には「嘘だろ・・・」と漕ぐよりもただ呆然と見上げてしまったのだが、しかし今はその坂へと向うしかなく、また、漕ぎ出すしかない。あれほど気合の入っていたスタートであったが、その立ちはだかる大きな壁に、一目見ただけで足は重く奮わなくなってしまった。そんな坂が6km延々と続く。辺りは深い森で覆われ、また道脇には見事なまでの渓流が流れ、また幾つも名瀑を見せてくれもしたが、しかしそれらを楽しんでいる余裕はとてもない。心臓がはちきれんばかり強く、また大きく鼓動し、自分の耳にもその鼓動が聞こえてくるほどであり、また身体もそれと共に燃え熱く、汗は滝のように噴出し、また息も乱れる。だが、距離の方は焦るほど全く進まない。この激坂のため速度は歩くのとほとんど変わらない僅か5kmほどで、さらにはそこまで速度を落とし必死で漕いでも直に上っていくことは出来ず、狭い道を精一杯使い蛇行しながら漕ぎあがるものだからさらに距離はのびなかった。たかが6kmであるが、しかしそのあまりのきつさ、そしてつらさに何度も途中で休もうとも思ったのだが、しかし、一度足を止め身体を冷やしてしまったものなら、もうこの坂に挑んで行けない様な気がし、それが怖く、休むことなく前だけを見、必死で漕ぎ上がって行った。

早池峰神社参拝
見えた!早池峰山

 「もうすぐだろう・・・」、そう何度も何度も思うのだが、しかし一向に終りは見えず、延々と坂は続いていた。あれを越えればとも、もう何度思ったことだろうか、しかしその先も変わらぬ道、そして景色だけが待ち、何度も愕然とさせられ、それが何十回と続く。もう期待することさえ、無駄のように思えてしまうのだが、それでも先を見るたびにやはり期待してしまう。すでに目指す早池峰山は前方に高々と聳えているのが望め、峠が近いことは察しているのだが、しかし、その登山口は一向に見えてくる気配はなく、それでも自転車をただ漕ぎ進めるしかなかい。わずか6kmの坂、それは私にとっては長い長い道程であった。しかし、その分、登山口へと到着したときの喜びは大きい。峠まではまだ2km残してはいるもののここが早池峰の登山口となるのだ。こうしてなんとか到着した登山口である河原坊、しかし、その喜びを表現するには疲れすぎ、また喜びは大きいものの、この後に登山が待っていると思うと、喜び気を休める訳には行かなく、こうしてようやく到着した登山口ではあるが、しかし張り詰めた筋肉の緊張を休めることなく、すぐに登山準備へと取り掛かっていた。

 先ほどまであれほど綺麗に望めた山頂、しかしいつの間にか山頂は雲で覆われ始めていた。それでもその山容は魅せられるものがある。まるで北アルプスのように険しく鋭い、その早池峰山、それを直登していくのだから、どんな険しい道が待ち受けているのか、胸高鳴らせワクワクしながら山頂へ向けて歩き始めた。何度見上げてもほんとうにあそこを登って行くのかと思ってしまうほどの崖であり、岩場を見上げながら、まずは沢沿いに登って行く。すでに足場は巨石がゴロゴロ転がり歩き難い。しかしまだ傾斜はそれほどでなく、テンポ良く距離を延ばしていくのだが、その足も距離と共に重くなり始める。もちろん疲れよりもその急になり始めた斜度のせいであり、見上げれば山頂は目の前の崖上に聳えたち、その景色は見るたびに北アルプスを思い起こさせ、その荒々しい断崖へと足を踏み入れていった。

登山へ出発♪
急なザレ場が続く
目の前の薬師岳

 緑濃い広がるハイマツ帯に浮くように点在する真っ赤な模様。すでにこの辺りも紅葉は始まりだし、秋の足音を聞きながら山頂へと向けて直登していた。手で身体を引き寄せなければ上れない岩場も何箇所もあり、その斜度に苦しめられるのだが、しかし息こそ上がるが苦痛はない。私にとってはこの岩場、ザレ場が面白く、アスレチックを楽しむように気持ちよく標高を稼いで行く。自転車を漕いできたということもあり、登山最初からすでに身体は温まり、疲れこそややあるものの、登りに対する体が出来上がっているだけに調子はよく、また楽しくこの登山の場合は登っていくことができた。登山者が思ったよりも多かったのもその理由かもしれない。他の登山者を風のように追い抜いていける自分が気持ちよく、疲れも忘れてグイグイと鎖場を越え崖を楽しみながら登って行くのだが、しかし今まで勢いよく登ってきた足取りもさすがに疲れの色が出始めた。ややペースが衰え始めた時、見えたのが山頂だ。まだまだと思っていただけに拍子抜けする山頂であり、また時間も登山口からまだ1時間半も掛かっていない。ほんとうに山頂?!そう何度も疑い辺りを何度も見回すほどであったが、紛れもなくそこが山頂であった。

 視界はない。山頂付近は深いガスで覆われ期待していた展望は残念ながら望めなかったが、しかい、下からこの山の山容を見れただけでもよかったと思いながら、のんびり山頂でのひと時を過ごしていた。登頂時にはワンゲル部、そして老夫婦、老登山会などの人たちで賑わっていたが、時間と共に1組、2組と下山して行き、残ったのは私含めて2、3人ほどと静かな山頂へと変わっていた。そんな静けさの中で山頂の早池峰神社奥社に参拝し、私も冷たい空気漂うその山頂から脱げるように後にした。

山頂までもう一息!
ハイマツ帯と紅葉
ガスの中の山頂

  下山路は登りと変えて、小田越峠へと降りる道へと選んだ。まだまだ登ってくる人が多い中を縫うようにして気持ちよく下山路を行く。タイムを争うわけでもないが、ついつい駆け足のように足取りは速くなってしまい、気付いた時にはひとりで競争をしているかのようなスピードで山を駆け下りていた。ちなみにこちらの方が登りよりも段違いで歩きやすい。同じ道で帰路についていたなら、そのあまりの傾斜に苦戦していただろうが、しかしこちらはそれほど急ではなく、岩場やザレ場こそあるが、しかし下りやすいことは確かで、そんな岩場をトントンと気持ちよく駆け下りてあっという間の小田越峠であった。そこから車道を30分ほどさらに下って行くと元の登山口である河原坊に帰るのだが、この今歩いている急な車道、このあと自転車で上がってこなければならないと思うと気が思い。この峠を越えて太平洋へと出るが為なのだが、しかし、下山後はその力はすぐには出ず、太陽充電するかの如く、強い日差しを全身に受けながらベンチで30分ほど昼寝をした。

下山後、振り返れば
 見上げればいつの間にか、雲から早池峰の山頂は顔を出していた。悔しいと思いながらもこればかりは仕方がない。逆にまた山頂を見れてよかった、そうとも思いながら昼寝から目覚めた身体を奮い立たせて、荷物をまとめ先ほどの小田越峠へと挑んでいった。そんな時、下山してくるたくさんの登山者に声掛けられ応援してくれた。恥かしながらもやはり嬉しく、その気持ちを笑みで返す。また、「中村さんですよね?」と声掛けてくれる方もあり、こうして私を知っていてくれる人がいることには驚きながら、最後、距離にして2km、標高差は200mという激坂を自転車で駆け上がり、こうしてやっとの思いで上りきった標高約1250m!ここが何よりも嬉しかった。早池峰に登頂した時よりも感動は大きく、もちろん下山した喜びよりもこの到達がなにより嬉しかった。今日の難所がこれですべて終わったと言う安堵からきたのだろう。この早池峰山と峠、もう前々からきつそうな道だけに行きたくないと思いながら頭を悩ましていた。そうな所だけにこの終りが嬉しくて溜まらず、ひとりまた笑みを溢しながら防寒着を重ね坂道へと気持ちよく突入していった。

 どこまでも続く長い長い下り坂。あれだけ上ったのだから当たり前だろうが、それにしても上りに上ったと自分でも感心しながら気持ちよく坂を駆け下りていくと、先ほど追い越された1台の車が前方で止まり私を呼びかけていた。足を止めると、なんと余ったからとお菓子やおにぎりなど両手いっぱいにくれるではないか。ありがとうございました。こうして応援して頂く度に”ひとりの旅ではない”と心から思い、また”自分自身だけで成し遂げているものでもない”と改めて実感しながら、それをエネルギーにし、また漕ぎ出していった。

 この先、遠野方面、そして宮古方面と分かれ道がある。最後の最後まで迷ったこの交差点。近道を行くならこのまま遠野へといきたいところだが、鉄の町として有名な宮古の先、釜石も観光してみたい。また久しぶりの海を見たみたいそうとも思い、かなり遠回りにはなるが宮古・釜石を目指して自転車を漕ぎ進めることにし、また軽快に自転車を進めていった。やや追い風にも恵まれ、また川沿いの穏やかな下り坂が続くだけにここは一気に距離を延ばしていく。そのお蔭でなんとか日暮れ前には宮古市街へと入ることが出来たのだが、問題は寝床である。どこかによい公園はないだろうか、海を前にし、さらに山間に囲まれている小さな平野部だけに土地は狭く大きな公園はない。不安になりながらも探し進めると、あるではないか、小さな公園ではある東屋もあればトイレもある。国道沿いの為にやや落ち着かなくはあるが、それで申し分ないところであり、迷わずその公園へと駆け込んで行き、そこで今日の疲れを癒すことにした。

頂いたおにぎり♪
 到着してほどなく雨がポツポツと落ちてくる。雨が降るとは聞いてないよと思いながらも、それまでに到着できたこと、さらには屋根があることに安堵し、溢した言葉の割には苦には思っていない。明日には止んでくれればいいやと思っている。こういして始まった夜はやっぱりHPの更新作業から始まり、そして今夜はいつもと違ったことも夜に待っていた。それはラジオ出演。FM Champlaさんで毎週放送してきてくれた「夢1977」、今日がその最終回でもあり、また最後の生出演でもある。ラジオ、いや、電話そのものが苦手なだけに今回もかなり緊張しての出演であった。そして何度もどもりながらも自分の気持ちをラジオにぶつける。そんな反応がラジオ終了後にメールが入ったのが嬉しく、出てよかった!と心から思い、またさらには旅をし広報活動をしよかったと心からそう思い、また、これが旅のエネルギーだとも改めて実感した。こうしたメールの中でとくに嬉しかったのが、「私も献血に行って見ます。」というメールで、自分の旅が自分だけの旅に終わらず、人の役にたてている、また影響を与えていると言うことが、嬉しさはもちろん、これが自分の今の仕事であると思っているだけに、そのわずか一歩であるが、その達成感にも浸っていた。そしてその喜びを胸に22時半眠りについたのだった。

 沖縄 FM Champlaさん、そして担当・登川さん、ありがとうございました。

 ★今日のお食事♪
 ・朝食 : ごはん・野菜コロッケ・味噌汁
 ・昼食 : パン×2・菓子
 ・夕食 : おにぎり×2




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