標高0mから動力を一切使用しないで人力のみで百名山を登頂しようと日本一周のときから挑戦してきた。1年半の道程を越え、続いて今回この「日本アルプス往復の旅」で3年越しの人力百名山の達成に至った。
しかしこの人力百名山は私にとって夢でもなければ目指している訳でもない。ただ意地になり、仕方なくの百名山であり、最後にはやらなければならない旅となっていた。そうした心から目指した旅ではなかっただけに実際の旅の辛く厳しい時には普段以上に「なんでこんなことしているのだろう…」と苦しんだ。自分のやりたい旅、伝えたい旅とは間違いなく違う。そう分かっていただけに一歩一歩はどうしても重くなり辛さは増す。しかし、やめようとは一度たりとも考えたことはない。意地であった。
それは自転車日本一周の時から芽生え始めたもので当初はただ軽い気持ちで旅をしながら百名山を制覇できたらという思いであり実際に無理な登山は避け、また日数的にも厳しかっただけに信州の山々を多く残した。しかし徐々に地方の山々を登り百名山を塗りつぶしてゆく中で、まだ誰も成し遂げていないだろう人力での百名山の挑戦してみようと思い始め、そして最後は人にも言いHPにも書いた。しかし、日本一周を終えた時、思いは違う旅を夢見ていた。もう新しい夢を新たに置き、自分の中では人力百名山は過去のものとなっていた。だが、公言した以上は百名山をやり遂げなければならない。自分とけじめとしても中途半端である。日本一周を終えたといっても旅は途中であり常に後ろ髪を引かれとても新たな夢へと走る気分までにはなれない。まずは百名山を終わらせてから。そこからの新たなスタートであった。そうした終わらせなければならないという意地からの今回の「日本アルプス往復の旅」の出発であった。