昨日に引き続き霧深く視界のない朝だった。標高は250mほどとそれほど高くないためか、さほど寒さは感じなかった。今日も気温はグングン上がりそうだ。しかしこの温かさでまだどれほどの雪が残っているのだろうか、もうほとんどないのでは?!そんな疑問も抱きたくなるほどの温かさであった。今朝は5時起き、起床と同時にご飯を焚き始め、急いで食事を済ませて、テントも撤収。深い霧のためにテントはもうビッショリとなってしまっていたので、その片付けからして気が重く、このどす黒い空を見上げると登山する気までなくなってしまいそうだ。それでも、天気予報の”晴”を期待して、いよいよ登山口へ向けて漕ぎ始めた。
漕いでも漕いでも未だ山間に入らず周辺は田園に覆われていた。そのため傾斜はさほどきつくなく、緩やかな坂を川と共に上って行く。この川の真っ直ぐ先には”雨飾山”があるはずなのだが、もちろんそんな姿は霧のために見えない。約30分ほど漕ぎあがっただろうか、田園地帯を抜け、V字の沢沿いの山間へと入っていった。道もだんだんと悪路になり、また傾斜ももちろんきつくなってくる。もう、この辺りが自転車限界か・・・ この先に丁度よい広場を見つけたので、そこに自転車をとめて、ここから先いよいよ徒歩の登山へと入った。自転車の方は重い空模様を心配して雨具を取り付ける。それほど、空はどんよりしていた。
まだ標高は3、400mだろう。やや標高差はあるきつい登山になりそうだ。車道をひたすら登るのだが、とても車道とは思えないほどの傾斜へと一気に変わり、また道はさらに荒れだし、所々はダートにもなっていた。「自転車をあそこで置いてきてよかった~♪」、そう心から思いながら、一歩一歩、車道を進んだ。道は大きく蛇行しながら登っていくのだが、嬉しいことに登るにつれて空がだんだんと明るくなってきた!白山の時と同様に、日が昇ると共に霧は晴れだし、また残った霧も眼下に広がるという、先ほどとは打って変わった幻想的な景色を見せてくれた。自然、足取りもそんな景色に誘われて軽くなる。また路肩には予想に反して早くも残雪が残り、そんな雪景色を眺めながら、気持ちよく約1時間ちょっと車道を登っていくと、やっと本来の登山口である”雨飾温泉”へと到着した。
駐車場には1台の車が止まるのみ。こちらからの登山者はその1名だけだろうと思われた。ただ、反対側の小谷温泉側からの方がメジャーなようだが・・・ 8時20分、足を止めることなく、そのままの足で登山道へと入った。いきなり急登が待ち構え、そのまま一気に標高を稼ぐのだが、所々に残雪が残り、急登だけになかなかそれらに悩まされた。一時は大した距離ではないのだが、きつさと恐怖のあまりアイゼンまで取り付ける始末で、でもまたすぐに普通の登山道へと変わる為、また外しと、残雪期ならではの、ペース乱れる登山となってしまった。そのため、意外に疲れる。いや、ただ単にこの急登がきついだけかもしれない。呼吸が乱れ、汗をだらだらかきながら必死で登っていく。この大汗にはひとつ理由があった。実はスパッツ(ズボンの裾、靴を覆う雪避け具)を忘れてしまい、雪がどかどか靴の中へと進入してくる為に、仕方なく下はカッパを着込んでいた。そのため、なおさら暑く、あた歩きにくく歩行を困難にしていた。
振り返ると見事なまでの美しさでお隣の山、”駒ケ岳”・”鬼ヶ面山”などが聳えているのが望めた。頭上にはさきほどの天気が嘘のような青空が広がり、この先のさらなる展望が期待でき、山頂からはどんな景色が広がるのか、楽しみを膨らませながら標高を稼いでいった。そんなときであった、あるひとりのおじさんが早々と下山してくるではないか!「断念して引き返してきた。滑落が怖くて・・・」そう話し、早々に下山していってしまった。先ほどの1台の車の方だろう。ただ、聞くとまだ3人ほど登っているそうだ。そして雪渓ではロープを取り出して本格的に上がっているそうだ。それを見て、「私にはとても・・・」そう思い引き返してきたそうだった。自分もさすがにこの話を聞いて、不安になりながらも、とりあえずそこまで登ってみることにした。3人のグループだけに、やや本格的にトレース(足跡)が残り、すこしは歩きやすいが、それでも雪渓を横切るときにはかなりの恐怖を覚えた。そして問題の急登の雪渓だ!見上げると、確かに3人のグループがロープを手に登っていっていた。ただ、ちょっと様子が違う。なんと言ってもロープは虎ロープでとても命綱には見えない。さらには靴は長靴ではないか?!「雨飾温泉の人たちかな?!」そう思い、必死で雪を砕きながら上っていく話を聞くと案の定、温泉の方たちで、安全のためにロープをこの雪渓に備え付けている最中であった。ちょっと見た目、「どきっ!」 とさせられてしまったが、逆に今は山小屋の方ということで安心感を覚え、この先、一歩一歩、足場を固めながら雪渓を登って行った。だが、さすがに急な雪渓だけにピッケル(雪山用の杖)が欲しいと思った。今はだいぶ日が昇り雪がシャーベットと化しているために足場がやや作りやすくなってはいるが、でもこれがもう少し早い時間ならアウトだ!とても登れる坂ではない。その必要性を感じながら雪を踏みしめていた。
もう一面の雪景色だけに夏山登山道のかけらはなかった。途中、山小屋の方に道を教えていただきながら、ようやく山頂直下の尾根に登りつめた。吹きさらしになる尾根だけにここだけは雪は全くなく、アイゼンを外してあとは軽快に山頂へと11時25分、無事登頂することが出来た。思ったよりも時間は掛かり、そしてきつい登山となってしまったが、でも山頂からの展望が全てを洗い流してくれた。西側には3000m急の北アルプスの山々が連なり、そして東には焼山、火打の山々、北を見れば、雲海の向こうにうっすらと日本海の地平線を望むことが出来なのが印象的であった。ここから望む山々、主な山のほとんどがすでに昨年の夏に登った山々ばかりだ。火打、妙高、高妻、戸隠、白馬、五竜、鹿島槍、どれもこれも懐かしく、そしてまた日本の真ん中へ戻ってきた。それを実感を噛み締めながら、しばしその景観に見いっていた。
山頂にはこの季節、曜日にしては意外の人数が登頂していた。ほとんどは年配の単独登山者で、5、6人はいただろう。そんなおじさん方と山の話をいろいろ聞かせてもらいながら山頂でののんびりした時間を過ごして、12時10分、下山へ向けて出発した。「またあの雪渓・・・ イヤだな~」、恐怖が込み上げてくるが、意外に踏み入れるとスイスイ下ることが出来た。雪もこの陽気のおかげで柔らかく、靴スキーをしているかのように足を半滑らせながら軽快に一気に下っていく。そして、なんと驚きべき速さで、13時40分には元の”雨飾温泉”へと下山することができた。
無事下山してきた喜びが込み上げる。このような雪山などの難路の山は登頂よりも下山してきたときが一番嬉しく達成感が込み上げてくる。そんな高鳴りが鳴り止まない喜びのまま、さっそくこの雨飾温泉へと入浴した。赴きある木の湯船に浸かる。なんと言っても登山後だけに気持ちがいい♪山々の絶景が望める露天と共に温泉を堪能して、身も心もすっきりさせて、あとは快適な車道を約1時間、鼻歌まじりで気持ちよく下っていった。
振り返れると、朝には望めなかった駒ケ岳はもちろん、今、登頂してきた雨飾山は常に聳えていた。自転車であとは気持ちよく駆け下りていっても、変わらず田園地帯の先には「ほんとうにあの山の山頂に数時間前にはいたのか?!」と、窺いたくなるほど雄大に聳え立っていた。何度も振り返りながら、別れを告げ、後は今日の寝床目指し一気に突き進んだ。
今日の寝床は道の駅・能生を予定していた。ただ、そのまでたどり着く前に空腹で倒れそうだった。コンビニでも、と思いせっかく設置されている自転車道から離れ国道を探しながら行くがなかなか見つからない。諦めて自転道を走ると、眼下の国道にコンビニという運の悪さであり、そのまま能生の町へと入ってしまったが、ここでスーパーを見つけ入ると、なんと嬉しいことに半額弁当がどっさり♪迷わず明日の朝食分まで購入して、道の駅で地平線に沈む夕日を眺めながらやや夕食をとった。このあと、テントを設営し、2日分溜まった日記を急いで書き始めるが、そんな簡単に終わるわけもなく、1日分の日記を残したまま23時過ぎに就寝した。
★今日のお食事♪
・朝食 : ごはん&レトルト五目丼
・昼食 : パン&お菓子
・夕食 : スーパーの店屋物×2