車輪人の自転車日本一周・登山の旅 車輪人の自転車日本一周・登山の旅

2002年 9月8日 (日) - 63日目

天気 : 晴のち曇

体調 : 良好

宿泊地 : 西穂山荘(キャンプ場)

本日の移動 : 穂高山荘~奥穂高岳~ジャンダルム~西穂高岳~西穂山荘

走行距離 : 0.0km

累計距離 : 1,877km
本日の出費

食費 : 200円

観光費 : 0円

宿泊費 : 500円

雑費 : 0円

費用詳細 : 食費:水代、宿泊費:キャンプ場利用料

現在地 : 北アルプス  ( 全走行図 )

ジャンダルム

 4時半起床。すぐに外の天気を見た。今日の天気はいつもにまして気になった。なぜならば、生死を分けかねない運命の選択になりかねないからだ。その選択とは・・・ 雨なら迷わず前穂経由で下山、そして晴ならジャンダルムを越えて西穂へ。もちろん西穂へのルートの方が険しく危険だ。通ってみたいが怖い・・・ はたして自分の技量で乗り越えられるだろうか?その選択を天気にたくした。そして結果は・・・ 見事な雲海の広がる晴天だった。西穂高行き決定!嬉しいが、ちょっと複雑な気分だった。
 昨日の2人組、鞠谷・高橋さんたちも西穂へ行くそうだ。三人気合を入れて6時40分出発した。はたしてどんな山行がまっているのだろうか・・・ また、昨日同様、午後になって天気が崩れてこないか心配だ。究極の難路だけに悪天候は生死にかかわる・・・
 まずは奥穂の登頂へ。ここも鎖場、岩場ありの登りだが、昨日の難路に比べれば雲泥の差。それでも気を引き締めて登る。そして7時20分、登頂。ここからの展望はこの山行中、最高だった。一面の雲海に浮かぶ山々。そして名高いジャンダルムが目の前に聳え立つ。ずっとこの展望を楽しんでいたい。そんな気持ちだったが、そういうわけにもいかない。今日も長い、そして今まででもっとも難路な道なのだ。

穂高山荘から
常念岳と朝焼け
穂高山荘から
常念岳と朝日
奥穂山頂より
遠く槍ヶ岳

 この奥穂山頂には2mほど積み上げられた祠がある。標高は3190mと日本第3位の高さになるのだが、この2m積み上げることで、3192mとなり、2位の北岳に並ぶことになる。そんなちょっと面白い祠の上で記念写真を撮って、先を急いだ。

奥穂山頂より
雲上のジャンダルム
奥穂山頂より
乗鞍岳と御嶽山
奥穂山頂より
前穂

 まずは最初の難所”馬の背”(ナイフリッジ)、それが過去最高に恐ろしく怖かった。さらに夜露のせいか岩場も湿っている。もうこれをみて、引き返そうか・・・ ギブアップ・・・ と言いたくもなったが、それでも歯を食いしばり、一歩一歩、恐怖のあまり必要以上に力みながらもなんとか通過。最初からこのような難所で、この先が思いやられる。

奥穂山頂より
雲上に浮かぶ笠ヶ岳
奥穂山頂にて
恐怖の馬の背
モデルは高橋さん

 今日はずっと鞠谷・高橋さんと共に行動してきたのだが、あとで聞くと、皆同じようにこのナイフリッジで「引き返そう・・・」と声が出そうになったという。
 その後も馬の背に負けない難所が連続する。息が詰まりそうだった。そんな時、高橋さんが会話で場を和ましてくれたりしてくれた。
 皆、いっぱいいっぱいで、なんとか次の難所、”ロバの耳”を越える。もう、ジャンダルムは目前だ!ワクワクする反面、自分に果たして登れるのだろうかと不安も襲う。そのジャンダルムに登るには、左へ巻いてから、ピストンでの登頂となる。そのためザックはそこに置いて行けるため、他の難所よりは気は楽であった。それでも荒々しい頂だけにかなりの難路を予想していたが、予想に反して思っていたよりも楽に登頂。荷物がなかったせいもあるだろうが、ちょっと拍子抜けしてしまったが、それでも、第一の目標であるジャンダルムに登頂できたことで、その嬉しさは絶頂だ!奥穂の頂にいる人たちに手を振って喜びを伝えた。そして2人、大声でその喜びを発散したが、なぜか自分はちょっと恥ずかしくて出来なかった。今となってはかなりの後悔だ。

ジャンダルム
ジャンダルム
ジャンダルム

 とりあえず、第一の目標は達成したが、この先もまったく気の抜けない難所が西穂まで続く。3人で声を掛け合い、慎重に数々の難所をクリアしていった。10時25分、無事、天狗のコルを通過するが、まだまだ難所は続く。そして、この先、一時小雨が降ることもあった。ルートの分かりにくいところも多々あった。何箇所も間違えてしまったこともあった。一番苦労したのが、間ノ岳付近。ルートを大きく間違えてしまった。そんなときは引き返す勇気も必要だった。

ジャンダルム頂より
奥穂高岳
ジャンダルム頂より
目指す西穂高岳
ジャンダルム頂にて
鞠谷さんと

 自分は3人の中で、2番目を進んだ。そして、先頭を行く鞠谷さんのルート判断に多く助けられた。そして時には3人で助け合ったりもした。
 そんな時、間ノ岳の過ぎたあたりだっただろうか、今となっては難所が多すぎてはっきり覚えていないが、ただ、この事件だけは忘れることができない。崩壊したガレ場の下りのことであった。先頭を行く鞠谷さんが左へ巻いて進んでいった。もちろん巻くから姿が見えなくなる。そんなとき、突然ものすごい轟音が鳴り響いた。落石だ。それと共に山が大きく崩れていった。いつまでのその轟音は鳴り止まず、その崩壊の規模の大きさを物語っていた。
 私、そして高橋さんは言葉を失った。最悪の事態を予感した。崩落がおさまってから、高橋さんが大声で 「キク~!!!」と叫ぶが返事はない・・・ さらに焦った。あまりに恐怖に足を震わせながら、慎重に崩落地へと向かった。すでに頭の中は真っ白だった。そんな時、先の岩場から鞠谷さんが顔を出した。それでもまだ現状が把握できない間があった。そしてお互い無事を確かめ合った。
 なんでも鞠谷さんが次の一歩を大きな岩に踏みかけようと、体重を少し乗せた瞬間、その大岩が崩れ落ち、それがきっかけで大崩壊したらしい。幸い、鞠谷さんはまだその岩へ体重を移していなかったために助かったのだ。そんな恐ろしい事件があった。
 その後しばらくその恐怖を忘れずことが出来ず、みな足取りはさらに慎重になった。早く西穂山頂に立ちたい。西穂はまだか・・・ ただそれだけを考えていた。
 まだまだ幾つもの小ピークを越える。そして前方に大きな頂が!とうとう西穂山頂か?!これを登りきればと、辛いのぼりでも足取りは早くなる。だが、期待とは違い、山頂はひとつ先のピークだった。ショックに呆然としてしまった。でも先のそのピークには、たくさんの人たちと、そして標識が立っているのがはっきりと確認できた。今度こそ山頂に間違いない。
最後の力を振り絞り、山頂へ駆け上がった。そして14時、喜びの山頂だ!笑顔が絶えない。3人で力強くハイタッチ!!だが、このときも深い霧に覆われ、視界はほとんどなかったが、それでも嬉しかった。 

西穂山頂から
歩いてきた奥穂方面
西穂山頂にて
左:鞠谷さん 中:高橋さん
右:私です。

 14時半、まだ喜びの余韻を残したまま、今日のキャンプ地、西穂山荘に向けて出発。さすがに気も抜けてダラダラと歩きはじめるが、以外にこの先も岩場が続く。だが、今までの難所に比べれば可愛い岩場だ。それでも足を踏み外せば大事故にもなりかねないので、それなりに気を引き締めるが、今までのような緊張感はない。その先も幾つものピークを越えた。途中の独標までもかなり遠く感じた。足が重く進まない。ようやく独標か?と思っても、残念・・・ ピラミッドピーク・・・ あまりの小ピークの連続に怒れてきてしまうほど続いた。そしてようやく独標。ここで少し休憩して先へと進む。
 ようやくこの先から岩場もなくなり、ハイマツの道となった。岩場の道だけしか見てこなかっただけに、懐かしく、新鮮な感じで嬉しい。だが、疲れはピークに達していて、足取りは相変わらず重たかった。
 霧の中、小屋は見えないかと前方を気にしながら進んでいく。もうそろそろだろうと思ってもなかなか小屋は見えてこない。さらに下ると樹林帯へと入る。小屋は近い!そんな雰囲気がした。そしてようやく小屋が見えた!歓声が沸くほどに3人喜んだ!!16時20分、西穂山荘へ。また力強くハイタッチして喜びあった。
 時間が時間なだけに、ゆっくり喜びの余韻に浸っていられない。テントの設営の取り掛かった。空腹だったこともあり設営後、すぐに夕食をとった。その後は3人で小屋内のテーブルでワインとチョコレートをご馳走になりながら、3人今日の思い出を語り合った。そして8時過ぎにテントに戻り就寝へ。そのときの夜空の星達が綺麗だったこと・・・
 鞠谷さん、高橋さん、今日は本当にありがとうございました。どんだけ心強かっただろうか・・・ もし一人なら難路以外にも、孤独とも戦うことになり、さらに厳しい山行になったことでしょう。




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